夢野久作「ドグラ・マグラ」日本三大奇書のひとつ。 | 休日の雑記帳

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日本三大奇書の一つと言われる「ドグラ・マグラ」。読めば気が狂うとかいう不穏な噂もあるので、読むのをためらっている方もいるかもしれませんが、これを読んで精神に異常をきたすことなどありえないから大丈夫です。ただ、気が狂いそうなくらい読みづらい作品でした。

 

☆あらすじ☆

 

九州大学の精神科に閉じ込められていた青年。目覚めた彼は、すべての記憶をなくしていた。彼の前に現れた精神科医の若林教授は、彼が複数の殺人事件の容疑者であり、事件の鍵は彼自身の記憶の中にあると語る。事件解決のため、また青年の記憶と健康の回復のため、様々な試みを行う教授だったが・・・

 

お勧め ★★★☆☆

 

読書が大好きで、活字を追うのが全く苦にならず、読書習慣が身についている人でなければ本作品の読破は苦痛なのではないかと思います。作品がかなり古いので、現代語的には漢字で表記しないものが漢字になっていたり、文体が独特すぎたり、言い回しがくどすぎたりでちょいちょい頭が止まってしまいます。

 

私は学生時代は本の虫だったのですが、社会人になってからはさっぱりでした。そんな状態で読んでみたところ、途中で読むのが面倒になってしまいました。それでも一日に本当に少しずつ読んでなんとか読み終えたのですが、そんな読み方では頭の中でストーリーがぶつ切りになってしまい、正直きちんとどんな作品か説明することができません。とはいえもう一度読みなおしたくもないです(笑)。二度読みしてまで理解したいという意欲はわかない作品でした。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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なるほど、奇書と言われる所以がよくわかる作品でした。なんだか夢の中にいるような感覚で、理解できているつもりだけど言葉で説明するのが難しく、あらすじひとつ書くのも億劫になってくるような、ふわふわした作風です。これはまさしく、自分が何者か全くわからない青年が感じていたものと同じ感覚なのかもしれません。

 

二人の天才的な精神科医、若林と正木の個人的な学術論争と恋愛事情によって引き起こされた事件と、それに巻き込まれてしまった青年、呉一郎(おそらく)でしたが、これも「多分そういうこと」という状態で、実際なにが、どれが真実だったのかは明記されていません。そして情報量が多すぎる。天才医師の様々な仮説や信念が随所に述べられていて、お腹いっぱいです。

 

脳はモノを考える器官ではなく、すべての細胞が同等にモノを考え、脳はそれを取りまとめているに過ぎないという仮説。すべての人類は狂人であるとする仮説。人は生まれる前に、有史以降すべての経験をもう一度なぞっているとする仮説。前世の記憶が細胞に残っており、何かのきっかけで前世の性質、記憶、行動が現世に引き起こされることがあるとする仮説。などなど・・・

 

医者でも科学者でもなかったはずの作者が、これほど大胆で面白い仮説をひとりで考え、そのすべてをこの小説の中に込めたのだとしたらすごいものだと思います。現代医学、科学で明らかに反証が出ている仮説もあると思いますが、フィクションとしてはかなり、なかなかのものです。ただ、作品中でまとまっていないから、読んだ人間の頭の中でもいまいちまとまらないのではないかと思います。読み手の理解力の方が問題なのでは?という考え方もありそうですが、アインシュタインの名言に「6歳の子供に説明できなければ理解したとは言えない」という言葉があるように、夢野久作自身が自分の仮説をよく理解できていなかったから、ドグラ・マグラが理解しづらい作品に仕上がっているのだと私は思いました。

 

面白いか面白くないかといえば、面白い作品ではあるのですが、頑張って読破するほどのものかというと微妙です。日本三大奇書などと銘打たれているので、一度は読んでおきたい、という気持ち以外ではあんまり積極的に読むべき本ではないかな、と思いました。読書大好きな方、理解力に自信がある方、困難こそ至福という方にはお勧めです。