映画「10クローバーフィールド・レーン」一番強いのは・・・ | 休日の雑記帳

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鑑賞した映画や書籍の感想記録です。
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制作年:2016年

制作国:アメリカ

 

「クローバーフィールド/HAKAISYA」の続編ということで、前作と同じかそれより落ちる作品なんだろうなと思っていたところ、想像以上の面白さでした。ただのモンスター・パニック映画ではありません。お勧めです。

 

☆あらすじ☆

 

恋人と喧嘩して家を飛び出し、車で僻地を走らせていたミシェルは交通事故に巻き込まれ意識を失う。気づくと見知らぬ地下室に拘束されていた。恐怖におびえるミシェルの元へ、ハワードと名乗る男が食事を持って現れる。出してほしいと懇願するミシェルに、ハワードは外は有害物質で汚染されており、出るのは危険だと諭す。そこはハワードのシェルターで、有害物質から逃げて来てハワードに助けられたエメットという男と3人で生活することになったミシェルだったが、彼女は彼らの言葉を疑っていた。

 

お勧め ★★★★☆

 

何が真実でどれが嘘なのか。本当に恐ろしいのは謎の有害物質か、人間か。どれが実在していて、どれが架空のものなのか。それらがわからないまま、初対面の男性ふたりと共同生活を始めることになったミシェルの不安、緊張、疑い、そして信頼と依存。前作とは全く異なる種類の怖さと緊張感が漂う作品でした。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「クローバーフィールド」と冠しているのに終盤まで化け物が登場せず、主人公ミシェルが核シェルターに軟禁された状態で物語が進んでいきます。いわゆるソリッド・シチュエーションというやつです。シェルターの持ち主ハワードは、一時はミシェルを拘束していたもののすぐに開放し、彼がミシェルを助けたこと、外が危険な状態になっていること、事態が落ち着くまでミシェルをシェルターに匿ってあげることを説明し、食事、風呂、服や娯楽までもミシェルとエメットに提供していました。

 

やや神経質で扱いにくい点があるものの、ハワードの行動は善意によるものにも見えます。しかし彼の話が嘘なのではないか、そもそも最初から仕組まれていたのではないかと感じさせる描写も多々あり、観客はミシェルと同様、疑心暗鬼に囚われてしまいます。外に出ると本当に死んでしまうのか、それともこの男と一緒に暮らしている方が危険なのか。

 

外が危険であるのは本当だと考えられる事件は序盤に起こりますし、エメットの「有害物質から逃げてハワードのシェルターに匿ってもらった」という証言もあるのですが、すべてがハワードの仕組んだ芝居である可能性や、ハワードもエメットも狂人である可能性も考えられ、外に出るのも男たちと一緒に暮らすのも怖いというミシェルの板挟み状態に緊迫感が漂います。

 

何が本当で、誰が信頼できるのか。答えは嘘と真実が入り混じっていたので複雑で、最後の最後まであれは本当だった、いや嘘だった、いや、やっぱり本当だった、と翻弄される見事なシナリオで、スリリングな展開が楽しめる作品でした。

 

エメットが想像以上にいいやつで勇敢だったこと、ハワードが想像以上に狂った人間だったこと、そして、外の世界が想像以上にやばい状態だったことも、物語の面白さを引き立てています。それからミシェルの賢さ、強さ、度胸にも脱帽。このヒロインはすごい。実にたくましい。私だったら腰砕けの腑抜けになって、一生ハワードとエメットとモノポリーとかやって過ごしますよ。

 

想像していたようなモンスターパニックではなく、サイコスリラーの様相を呈していた本作品でしたが、最後はきっちりクローバーフィールドらしく締めてくれました。化け物の怖さをじっくり魅せた後、生存者がヒューストンに集まっているという情報を聞いて颯爽とハンドルを切るミシェル。ただただ化け物に翻弄されるのではなく、人類が戦って勝ち残っているという希望がいいですね。この希望は続編にもつながる余地があるので、謎の化け物たちと戦う人類の新たな物語も見てみたいところです。

 

3作目にあたる「クローバーフィールド・パラドックス」は1作目の前日譚ということなので、3作目の後日談もぜひとも作っていただきたいと思える作品でした。