夢見る帝国図書館 | チャウ子のそれでも本を読むのだ

チャウ子のそれでも本を読むのだ

チャウ子のごった煮風500字読書日記
 地味に更新中f^_^

 

 

 

 上野公園のベンチで出会った喜和子さんが、作家のわたしに

 「図書館が主人公の小説」を書いて、と持ち掛けてきた。二

 人の穏やかな交流が始まり、やがて喜和子さんは終戦直後の

 上野での記憶を語るのだが‥。日本初の国立図書館の物語と、

 戦後を生きた女性の物語が共鳴しながら紡がれる、紫式部文

 学賞受賞作。              ー裏表紙よりー

 

 

 

 喜和子さんが謎めいていてミステリアス。

 樋口一葉が好きで図書館が好きで上野の路地奥の小さな家に

 暮らしていて。

 家族や過去のこともどこまで本当なのかわからず、作家のわ

 たしは翻弄されていきます。

 けど、私が作家でもきっと喜和子さんに強く惹かれていくの

 だろうなと思います。

 最初わたしは喜和子さんは上野の出身だと思っていましたが、

 実は喜和子さんは宮崎出身だということがわかったり、愛人

 だという大学教授が出てきたり。

 そしてしばらく連絡を取らないうちに老人ホームに入ってい

 て喜和子さんには娘さんがいることがわかります。

 果ては孫娘まで。

 しかし喜和子さんが上野で一緒に暮らしていたらしい男性と

 は何者なのか?結局そのあたりの喜和子さんの過去は判明し

 ません。

 この小説は喜和子さんの過去に何があったのかという筋と「

 夢見る帝国図書館」という物語(実際の史実らしい)が並行

 して進められています。

 この「夢見る帝国図書館」の物語が素晴らしかった。永井荷

 風の父や樋口一葉や吉屋信子、宮本百合子、芥川龍之介など

 教科書で目にするような文豪の物語も楽しかった。

 一方、帝国図書館が戦争の犠牲になっているのは辛かった。

 帝国図書館のそばに上野動物園があり、その上野動物園の動

 物たちも戦争のため殺され‥というのは辛さとともに怒りが

 湧いてきた。やはり戦争は憎い。★★★