殺人の門 | チャウ子のそれでも本を読むのだ

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チャウ子のごった煮風500字読書日記
 地味に更新中f^_^

 

 

「倉持修を殺そう」と思ったのはいつからだろう。悪魔の如き

あの男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。そして数

多くの人間が不幸になった。あいつだけは生かしておいてはな

らない。でも、私には殺すことができないのだ。殺人者になる

ために、私に欠けているものはいったい何なのだろうか?人が

人を殺すという行為はいかなることなのか。 ー裏表紙よりー

 

 

 再読です。

 主人公は田島和幸。田島と倉持の付き合いは小学校の頃から

始まります。田島は歯科医の父を持ちお手伝いさんまでいるお

坊ちゃん。

 しかし、祖母の死をきっかけに家族は崩壊し、両親は離婚に

至ります。父のもとに残った田島ですが、父がホステスの女に

うつつを抜かし、そこから転落の一途を辿っていきます。

 高校生のときにプールでバイトしていた田島の元に倉持が姿

を現します。秘かに田島が思いを寄せていた同じバイトの女性

と倉持はいつの間にか付き合うようになり、最悪の結末を迎え

ます。

 その後も倉持は忘れた頃に田島の前に現れ、倉持に災難をも

たらします。読みながら何故田島はこんなにも倉持にいいよう

にされるのかと歯がゆい気持ちでいっぱいでした。

 倉持の口の上手いのは納得ですが、いくらでも倉持を無視す

ることはできたはずです。

 大人になってからも倉持とは縁が切れず、むしろ縁が濃くな

っていくような印象です。詐欺行為に加担させられたり、いつ

でも好きな女性を奪われるという‥。

 いい加減、田島気づけよ、目を覚ませという心境でした。た

だ私が理解しがたかったのは田島がいつかは倉持を殺そうと考

えていたことです。

 殺すぐらいなら離れればいいじゃないかと思うのですが、最

後の最後にそれでも倉持は魅力がある人間なのだというような

ことが書いてあります。

 幼少時代はなかなか進めなかったのですが、そこはやはり東

野圭吾。途中から加速度的に面白くなっていきました。東野作

品としては暗くて地味だし、ヒーローがでてくるわけでもない

ので好き嫌いは分かれると思うのですが、倉持を許す、許せな

いのバランスが絶妙だと思いました。★★★