罪の轍 | チャウ子のそれでも本を読むのだ

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チャウ子のごった煮風500字読書日記
 地味に更新中f^_^

 

 

 奥田英朗さんです。

 宇野寛治は北海道の礼文島で漁師見習いのようなことをして

いました。窃盗癖があり頭もあまりよくありません。

 先輩の漁師にそそのかされる形で船で礼文島を出ますが、そ

れは罠で遭難しかけます。なんとか自力で利尻島に辿り着きそ

れから東京へと向かいます。

 時は昭和38年。東京オリンピックの前の年です。東京は湧

いていて山谷も繁盛しています。

 山谷の旅館の娘の町井ミキ子は旅館を切り盛りしながら税理

士の勉強をしています。ミキ子の家族は朝鮮人(文中のまま)

ということもあり何かと厳しい目に遭ってきました。ミキ子の

弟の明男はやくざになり明男は寛治と知り合いになります。

 浅草で男児誘拐事件が起き、その犯人が寛治ではないかとな

る中刑事の落合昌夫は寛治の動向を追っていきます。

 宇野寛治は今でいうところの発達障害だったのではないかと

思います。

 ただ、生まれつきではなく寛治の幼少期の頃に受けた虐待が

原因。物語の前半は寛治は馬鹿だけれど残酷なことができる人

間ではないような書かれ方をしています。

 ネタバレ注意

 なので私はずっと寛治はあくまで手先であって黒幕がいるの

ではないかと思って読み進んでいました。しかし実際はやはり

寛治が犯人で残酷な結果に終わってしまいました。

 警察が失敗をして接触しかけた犯人を取り逃がすところや警

察内部の覇権争いなどは読んでいて面白かった。刑事の情のよ

うなところもよかった。

 町井ミキ子のようなどんな家庭環境や出自にも負けず自分で

人生を切り拓いていく様もよかった。

 ただ、ことごとく残念だったのが寛治が誘拐、殺害に至った

心情が私には読み取れませんでした(ただ単に私に読解力がな

いからなのか)。

 ここらあたりがもう少し深く述べられていたらすごくいい作

品だったと思えたのに。★★