幻魔大戦 Rebirth 11巻
これで終わりだと思うと寂しいすなあ……
遥か時を超えて再会を果した黒龍ガモンの協力で、魔族たちの暗黒世界から脱出する丈。
計画が頓挫して歯噛みする“八つ目幻魔”ゼムドは、司令官シグに呆気なく倒され、“苗床”にされる。
ロシアの地に屹立する、不気味な“幻魔樹”
短絡的な人類の核攻撃でエナジーゲットし、幻魔樹より生み出される巨大な“火竜” 『コミック幻魔』のクライマックスで、富士の火口に現れたヤツですね
火竜の破壊力は圧倒的で、ほんの30分足らずで全世界に壊滅的な被害をもたらす……。
丈は立ち向かうが、かつて貴奴を滅した“超能力絶対零度”も、パワーを増した今の火竜には通じない……。
一方、廃墟と化した西新宿のビル街、ダミアン・ブラドに対するのは、“もう一人の東丈”。
“彼”の存在ですが、「丈の破壊衝動が切り離された」、あるいは「異次元の幻魔に取り込まれた丈」……みたいに予想してたんですが、そんなに単純なものでは全然なかったですね(^_^;;。
さすが鏡サマっ
「ダミアン(ギル)と丈」、そして「ジルとナオミ」の陰陽の対比的存在も面白い。
ナオミちゃんは『コミック幻魔』では「幻魔のスパイだったが、丈に恋をして幻魔を裏切る」存在でしたが、今作では初めからこちら側、“阻害能力者(ブロッカー)”と呼ばれる、他者の超能力を無効化してしまうという、特殊能力者として登場します。
一方のジルは、先述のように「近づく者全てに死をもたらす」存在であり、ナオミとの出逢いが大きな救いになるんですね。
ジルが登場時、大切に手にしていたベアのぬいぐるみは、『コミック幻魔』でナオミが丈にお守りとして手渡し、シグの攻撃で黒焦げになってしまう人形を想起させます。
そしてジルの内面に控えるアニマ。
いやあ、こんな形で物語に絡んでくるなんて
“彼女”の存在理由も明らかになり、彼女がもたらしてきた数々の悲劇も、星界一つ消え去った絶望と憎悪に由来するものだったんですね。そうか、アニマは “裏ムーンライト”だったのか
東三千子、そしてフロイの帰還。
やっぱりフロイはず~っと地球戦団の戦いを見護ってくれたんですね(涙)
火竜を討ち滅ぼし、ルナとの“再会”を果たす東丈
人々の願いを一身に受け、迎える幻魔司令官シグとの最終決戦
きっと、どこかの次元に存在するはずの、完全に“覚醒”した東丈だったら、バトルする必要はないと思うんですよ。
でも、シグの“熱烈なオファー”に応える形で(笑)、そして、名作『コミック幻魔』に最大級のオマージュを捧げる形で、こうやってちゃんと「バトル」して物語のクライマックスを飾ってくれたこと、めっちゃ嬉しいし単純にすげー面白かった
“女神たちの愛”が「とどめの一撃」になる展開も泣かせる……
「丈は“幻魔”にはなりません。私がいる限り…どんなことがあろうと」
三千子姉サマ~~~っ
“あの時”と同じく、三千子姉サマの愛が丈を護り
いやあ、でも、シグ、かっけ~すね
彼の戦いの美学ってば
潔く負けを認めて「とどめを刺せ」なんて。
幻魔にしとくのはもったいない
『トルテック』のラストで彼が登場した時には、オールドファンは狂喜したものですが、もしかしたら『幻魔大戦サーガ』って、シグがいたからこそ生み出されたのかも知れないですね。
あと、絶対に書いておかねばならぬのが戦士ベガ
ベガーーーッ
こんな辺境の星の為に、今までありがとう~~っ
(個人的に、彼は、太古の地球で行われたという幻魔大戦において、軍神として崇められた人物が、転生した存在だと思ってます)
ベガと、彼の“戦友”、超能力戦士フロイとの“再会”シーンが、まさか見られるなんて
このシーンとか、宇宙戦艦“メビュウス”の名称とかって、記憶にある限り小説版にはなくって、平井和正の「初期設定」にのみあるものですよね。
その「メビュウス」に乗って、丈とベガが宇宙の深淵まで旅するって……
ベガ……。
かっけかった……
彼の最期のシーンに関しては、ちょっと映画版へのオマージュかな って思ったんですが、関係ないですかね
いずれにしても、新たに生み出された“幻魔の侵攻がない”世界で丈とルナが再会を果たしたように、ベガもまた全く新たな生命を得て、再会できるって信じたいですね
最終話に描かれた「幻魔大王の正体」については、深いところで得心しつつ、でもこれだけが答えではないとも強く感じます。きっと、無数に真実は存在するんだと思います。……というか、見方によって変わってくるのかな。
『幻魔大戦Rebirth』、平井和正、石ノ森章太郎の多くの作品世界を繋ぎつつ、最後は“始まりの始まり”である『コミック幻魔大戦』に直接繋がる、これ以上ない形で終了してくれました。
面白かった
「幻魔大戦サーガ」の「完結」という点については、この『幻魔大戦Rebirth』の結末も、平井和正が『幻魔大戦deep トルテック』で示したエンディングも、ぼくにとっては大切な解答の一つです。
『幻魔大戦』は終わりません。
なぜなら、世界の在り方そのものだから。