先日、米国心臓学会でスタチンが歯周病(歯肉)の炎症を抑
える作用があることが紹介されていました。
なんでわざわざスタチンで歯周病を治そうと試みたのか?と
っても怪しい論文に思えたのでいろいろ調べてみると、どうも
動脈硬化症とスタチンのいろいろな効果を検証していた論文
のようで、その一つとしてついでにこんな効果もありました的
な内容のようです。
ランダム化、二重盲検法を採用しているので信用はありそう
です。
ITT解析はされておらず、対象者は最終59人と多からず、少
なからずといったところでしょうか。
論文は、動脈硬化症の患者さんに高用量のスタチン投与に
て、動脈硬化症改善と並行して歯肉の炎症も改善した、とい
う内容でした。
考察として、歯周病と動脈硬化症との関連を裏付けるもの
であり、
「一方の炎症に対する治療が、他方の改善につながる事実
を示した」
と締めくくっています。
さて、この論文をどのようにわれわれ歯科医師が解釈する
のが正しいといえるのでしょう。
恐らく、1~2年後位に歯科雑誌でどこかのいいかげんな
先生が
「スタチンを高用量服用すると歯周病が治る!」
こんな論文が発表されました、と書くことが予想されるので、
いまここでこの論文を検証してみます。
そもそもスタチンとは、コレステロールを降下させる薬で、そ
の上 抗炎症作用もあることは以前から知られています。
なので、歯肉の炎症が改善してもなんら不思議なことではあ
りません。
また、歯周炎から血液中の炎症性サイトカインであるIL-1
IL-6,TNF-αが増加するため、歯周炎に限らず慢性炎
症でこういったサイトカインの増加が認められる疾患なら、お
そらく同じことがいえそうにわたしは思います。
また、炎症改善の有無をPET/CTで判断されているので、
このことは歯周病改善とはあまり関係ないと思われます。
そもそも歯周病は歯槽骨、歯周組織の慢性炎症なわけです
が、
その治癒目標は、炎症が無くなるだけでは不十分なわけで、
炎症を改善させるだけなら、なにも副作用の可能性のある
スタチンを服用しなくても もっと確実で容易な方法はいくら
でもあるわけです。
ゆえにこの論文から得られることは、
歯周病を完治させる、もしくは歯周病に罹患していなければ、
その分動脈硬化症のリスクが減少される可能性がある、とい
うことではないでしょうか。
「もう迷わない根分岐部病変」 hyoron
このエビデンスを重視した医療を求めている時代に、いまだ
に自分の自慢話のような症例を集めた本があるのには ち
ょっと驚きました。
読んでも得るものは全くありませんでした。