「楠原君」
本屋でハルを待っているとカコちゃんに声をかけられた。
「カコちゃん? 珍しいね。」
いつもの待ち合わせ場所の本屋。2Fは漫画が置いてある。2Fで彼女を見かけたことはない。
「うん。ハル君、漫画好きだから。クリスマスプレゼントにしようかなって。」
プレゼント……。ハルはもらったらどんな気持ちになるんだろうな。
「カコちゃんはクリスマスはどう過ごすの?」
「24日は児童福祉施設にボランティアに行って25日は教会で歌うの。午後からは家でパーティー。」
「そっか。」
あとで澤田に教えよう。ボランティアと教会にお前も行けばいいと。
「楠原君はハル君と居るんでしょう? いいなぁ。」
「え?」
ハルがそう言ったんだろうか。
「ん? 聞いてないの?」
「うん。その……複雑だから、聞けなくて。」
確か、カコちゃんには事情を少し話せたと言っていたはずだ。
「うん。クリスマスするの久しぶりだって言ってた。」
「そうか、出来るようになったんだ。」
「ツリーを買ってあげたんだって。25日は家族でパーティーみたい。」
「じゃあ俺とって?」
「ザキちゃんとモトちゃんに言われてたよ。イブは恋人と過ごすって。『じゃあ楠原とだな』ってハル君言ってた。」
「こ……恋人?」
そんな認識だったのか?
「いいなぁ。楠原君は男の子で。ハル君の恋人になれるしね。」
「嫌じゃないの?」
「何が?」
「俺がハルと付き合うの。」
「だってハル君には『好き』が足りないもの。」
「え?」
「人から好きって言われる事に慣れてないの。小さい頃からずっと『要らない』って言われて。」
「カコちゃん……。」
そこまで聞いてるのか。
「だから、独占したいなんて思っても態度に出さない事にしてるの。たくさんの人がハル君を好きになるんだよ? って教えてあげたい。知ってほしい。ハル君はそんな小さな男の子だから。」
小さな男の子……。カコちゃんにとってはそんなイメージなのか。
「それにね。高崎君じゃなくて良かったな。ってちょっと思ってるんだ。」
周りも俺自身も高崎との方がお似合いだと思ってた。
「ザキちゃんとモトちゃんに、なんで高崎君じゃなくて楠原君なの? って訊かれてハル君が言ったの。『だってあいつお姫様みたいだろ?』って。」
いや、ちょっと待て。なんだ、その展開!