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去年、ビックリして、すごく心配だった事があったの。
大切なおばあちゃんの病気が悪化して、倒れたの。
もともと寝たきりだったけど、部屋に入ったときの、空気が冷たく感じたの。
声を掛けても、いつもの柔らかな感じが無かったの。
ギュッと目を閉じていて、声も掛けてくれなくて、何だか辛そうな感じに思えたの。
後から尋いたら、「けいれん」って状態に、何度も何度も繰り返しなっていたんだって。
「苦しかったと思うよ。」
って、ユウキが話していた。
あの時は、冷たくて、凍てついた感じがしたらから、思わずおばあちゃんに乗って、
「にゃーう、にゃーう、にゃーう…」
って、声を上げ続けたの。

直ぐに、ユウキのお母さんにユウキやハツキさんも駆け付けて、私を床にそっと降ろしてから、病院に電話を掛けていたの。
その時に、初めておばあちゃんの病名を知ったの。
「脳梗塞」なんだって。手足が痛くなる人もいるんだね。

それから、お部屋の中が赤く光る自動車が家に来て、
私はハツキさんに抱かれて、部屋を出たの。
ハツキさんは、親戚へ連絡をするために、必要なんだよ。って、言うけど、
おばあちゃんから私が降りなかったから、理由を適当に付けて、ハツキさんと私を遠ざけたのだって、思ったの。

おばあちゃんの部屋の窓が大きく開けられて、
オレンジ色の服を着た人が、たくさん入って来たの。
私は驚いて、腰が抜けてしまったようになって、動けなくなっちゃった。
ハツキさんも、おばあちゃんに近づきたいと思うのに、
じっと私を抱っこして、身じろぎひとつしなかった。
動くと、私が脱走するって、考えたのかなぁ?

だけど、あの時は私も驚いてしまったのと、
おばあちゃんが心配で、動く気持ちにはなれなかった。
おばあちゃんが元気になって、優しいおばあちゃんが、いつもの笑顔で笑ってくれるのを信じて、
私は、声を掛け続けていたんだ。

赤く、クルクル光る自動車がおばあちゃんを乗せて行ってから、ハツキさんとふたりで、なかなか進まない時計を見ていたの。
テレビもついていたけれど、内容なんて、少しも覚えていないし、
私は、時計の見方を教えて貰ったことも無いから、ハツキさんが、
「時計がちっとも進まないね。」
と、言うのに対して、
「ふにゃーん…」
としか、言えなくて。

やがて、ハツキさんのお母さんが来て、
ご飯を炊いて、おにぎりと味噌汁を作ってた。
それが後から、とっても役立ったの。
お腹がぺこぺこで帰って来た、ユウキやユウキのお父さんとお母さんのご飯になって、
流石だって、思ったの。
それにね、この時は運良くお泊りしているにゃんこも居なくて、
ハツキさんも、パニックにならなくて済んだし、
ユウキのお母さんの餌やりボランティアも、
一番負担が軽い役割りだったって、
ユウキのお母さんも、不思議がっていたよ。

そんな時に、親戚と言う人から電話がたくさん掛かって来て、
ハツキさんが、対応にてんてこ舞いになっていた。ハツキさんは、
「お昼を食べてから、意識が無くなったんです。」
とか、
「これからの見通しは、まだ立ったとは聞いておりません。」
とか、泣きそうな声で、話してた。
それに、ほとんどの人が、おばあちゃんが死ぬ前提で、話しているみたいなの。
まだ、手を尽くして、どうしようも無いというわけでは無いのに、
ハツキさんの携帯に、ユウキから処置とか経過の電話が入っているって、私だって気付いているくらいなんだから、
ハツキさんのお母さんが気付いていない訳が無いよね。

だんだんと、こたつの在る部屋には、おばあちゃんの兄弟の家の人が集まって来て、
私にとって、過ごしにくい部屋になっていったの。
動物が好きな子供を連れて来た人もいてね、私を追い掛けるから、ハツキさんが、自分の部屋に入れてね、鍵を掛けたの。

そこまでは良かったのだけど、トイレに行けないし、お腹は空くし。
何度か目の電話で、ユウキが気付いてくれた。
それで、こたつの中に潜ったら、足がいっぱい。居心地が良くない。
それに、好奇心いっぱいの、子供たちにも見つかった。

またまた、ハツキさんのお母さんの機転で、
ハツキさんと一緒にトイレを済ませて、
ユウキの部屋でご飯を食べて、水を飲んで、エアコンを入れて貰ったら、
ユウキから電話が掛かってきたの。
それでね、私がおもちゃ代わりになっていることを、伝えてくれたの。
それから、ハツキさんの息抜きも有ったのかな?
ハツキさんが泣きそうな声で、ユウキに話していたから。

私に関してはね、最初は親戚の子どもだけだったのに、私という猫に気付いた親戚の子供が、その子供の友達を呼んだのだって。それで、こたつの部屋は、
『この子誰?』っていう、大人が知らない子供ばかりになっていたらしいの。
親戚の子供の友達の子供に、
「自分の家に帰りなさい。」
って、ハツキさんのお母さんが言ったら、
「猫と遊んでからじゃないと、帰らない!」
とか、
「家が遠いから、一人では帰れない…」
なんて、駄々をこねているんだって。

だから、ハツキさんのお母さんが、
「お巡りさんに来て貰うけど、いいかな?」
って、言ったら、親戚の子供以外は、ほとんど帰ったって、聞いたよ。
それでもね、どうしても帰らない子供がいたから、ハツキさんが警察を呼んだの。
私を抱っこして、
「家族が来ていない人は誰かな?」
なんて言ったら、あっという間に3人。
「今、おばあちゃんの病気で、病院に家族のほとんどが付き添っていて、親戚だって名乗る人が来ているけど、私の記憶には無い人ばかりで。」
なんて、ハツキさんが話していた。
自称親戚の中にも、空き巣とかが、いたようなの。
ハツキさんとハツキさんのお母さん、お手柄です。

私の家に、親戚が集まって来たのも、おばあちゃんが死んだら、
「お通夜の前に遺産の内容を発表をする!」
って、親戚に対して、話していたんだって。
病院に親戚が集まらないようにって、おばあちゃんが考えていたんだそう。
おばあちゃんのお父さんから貰った遺産を、
おばあちゃんの甥とか姪と言われる人が、狙っていただけだったって、話だった。
それに、おばあちゃんの遺産だったら、ユウキのお父さんが法定相続人になるのにって、
おばあちゃんが家に帰って来てから、
皆んなで笑った。

おばあちゃんは、病院に到着した時には、本当に危険な状態で、
強い薬を沢山使ったら、今度は呼吸が危なくなって…
意識が戻るまでに時間が掛かったって、ユウキから聞いたよ。
だから、赤い光の自動車に乗ったのがお昼過ぎだったのに、意識が戻ったのが、次の日の明け方。空が明るくなっていた。

こんな時間に出前なんて無いし、親戚の人が
「寿司を取れ!」
なんて叫んでいたから、
ハツキさんとハツキさんのお母さんが
巻き寿司と稲荷寿司を作って出したら、
「こんなんじゃねえ!」
なんて、叫んでいたよ。

「おばあちゃん、若くして脳梗塞になったまでは、良くあることらしいけど、
リハビリ中に転んで、麻痺の無い足を折ってから、寝たきりになったの。」
って、おばあちゃんが教えてくれた。ふたりだけの秘密なんだって。
私は、人間には、
「ニャン!」
としか、聞こえないから、約束は必ず守るからね。