1970年を前にした東京の街には、
どの広場でも駅頭でも大学のキャンバスの中でも、
反戦フォークの歌声が溢れていた。
その頃、「♪自衛隊に入ろう!自衛隊に入ろう!」と歌う不思議な音色のシンガーが、三鷹・吉祥寺界隈に居た。
高田 渡。
その人は、伝道師、歌う詩人などと呼ばれていた記憶がある。
アグレッシブな叫びの曲ではなく、
自然で朴訥とした歌声。
何故か心に沁み込んでいくその詩は、
ただ攻撃的な風潮の世相とは別の位相で、
一人ひとりの内面に語りかけてくるようでもあった。
NHK教育テレビ。
特集で組まれた高田渡のシリーズを、
薄めの焼酎お湯割りを飲みながら、
静かに見続けていた。
歌を聴くのではなく、
詩を吟味するのでもなく、
ただ、そこにそうして生きてしまった一人の詩人の、
静かな死までの道筋を見続けていた。
そうか! 意味を問うてはいけないのだ!
同世代の一人の詩人の生と死。
私はこの男の何を、次の世代に伝えればいいのだろう?