新潮文庫から今年2月に出版された「人生に関する72章」(新潮社2009年2月刊)は、数学者藤原正彦先生の単行本の文庫化です。
もとより、読売新聞に二年間続いた人生相談コーナーの出版化なのですが、何しろ、数学者が人生相談をするという前代未聞の内容に興味がわきました。
10代の思春期から老年期までのさまざまな年代の男女からの相談は、多岐にわたりますが、その回答がすこぶる藤原的で楽しい。
相談者の相談内容を見てみると、総じて社会への適応に対する悩み、友人、家族、恋人との関係などですが、特に10代では、疎外感、孤独といった深刻な内容がたくさんあります。
しかし、品格の生みの親藤原先生は、阻害されることの意識そのものより、そういう自分を生み出している自分の「独創性」に目覚めたほうがいいと回答していきます。
「暗い」と仲間から指摘されて悩んでいる場合は、「その沈黙の中に自己反省の意識や他人を思いやる心が感じられれば、その暗さを武器にしないさい」といった意味のことまで言い放ちます。
悩みは、すなわち、自分のオリジナリティ発見の手掛かりとでもいいたげです。
この回答で相談者が理解したのかどうかは分かりません。藤原先生の諧謔を理解するには、もっと多くの言葉達と親しくなる必要がありますからね。
でも、回答の最大の特徴は
‥全てを、おおらかに肯定する強さ
を自覚することの大切さだったように思えます。
モノの見方、考え方には、両面あることを自覚したいところですね。