
思潮社から発刊されている月刊専門誌現代詩手帳。
その11月号の特集は「清岡卓行」さんだ。
戦後詩の中で政治の世界から遠く離れ、
愛と抒情の中に人間の悲しみを描き続けた詩人だと、私は思っている。
清岡さんの詩との出会いは、
他の多くの人と同じように、
夭折した天才原口統三さんの「二十歳のエチュード」の中だった。
その後、アカシアの大連で芥川賞を受賞された清岡さんは、
詩、小説、エッセイなど、ジャンルを問わずに活躍していく。
本誌では、巻頭に高橋英夫さん、新井豊美さん、宇佐美斉さんが清岡さんの全詩業について論じている。また、選定された代表的な詩も掲載されている。
その中で、三者共通して第一位にあげているのが、
「氷っ焔」の中の「石膏」という作品だ。
この詩の言葉の音楽性と言葉の彫像性(?)に心打たれた人は多いでしょう。
その最初の書き出しは‥‥
石膏
氷りつくように白い裸像が
ぼくの夢に吊るされていた
その形を刻んだ鑿の跡が
ぼくの夢の風に吹かれていた
悲しみにあふれたぼくの眼に
その顔は見おぼえがあった
ああ
きみに肉体があるとはふしぎだ
この詩は、まだ続きますが、
この最初の8行で、私は、清岡さんの感性にしびれたのでした。
清岡さんの詩に登場する「夢」。若くして美しい妻を失った悲しみが、「日常」の中に白んで見えているようです。石膏のように瞬間的に氷りつく焔。燃える情念と肉体との乖離が、どこまでも融合のない人間の心と肉体の距離を暗示させている。
全ての美しいものに対する清岡さんの感性とその表現は、いつまでも、私の心に響いているのです。