
立教大学名誉教授で正眼短期大学副学長の横山紘一先生が著した「十牛図入門 『新しい自分』への道」(幻冬社新書 2008年3月刊)を読んだ。
多くの人は禅に興味を持つと、まずこの十牛図の存在に行き当たる。
飼っていた牛が逃げてしまい、その牛を探す旅に出る牧人の物語を、10のシーンに纏め上げた図版の教科書でもありますね。
ここでいう「牛」とは、「真の自分のこと」を意味し、その逃げ出した牛、すなわち自分を探すという行為を禅の修業の中で体験する心の高まりについて比喩的に著したものといえます。
「牛が逃げているとはどういうことか。
なぜ牛を探さなければならないのか‥‥」(第一図 尋牛における問い)
十牛図の内容は、ご関心のある方は是非本著を読んでいただくとしましょう。
‥‥
ところで最近は、坐禅の世界に団塊の世代が押し寄せているということを聞きます。
私もその世代の尻尾あたりにいるのですが、この世代は坐禅の世界に何を求めているのでしょうか?
それは、高度成長期を駆け抜け、最後には空白の10年を耐え忍んできた団塊の世代が、
「自分とは何か?」について、本気になって問い始めたことといえるでしょうか?
一体、今までの自分は何だったのか‥‥ふと気がつくと還暦を目前にしている自分に気づき、何かを考え始めたのでしょうか?
そして、多様性を容認し、個を尊重しようという風潮の今日、では、「個」とは何か?
そんな根本的な問題を深く考えようとせずに流れていく「個性の時代」に、
どこに向かって走っていけばいいのか教えてくれるのが禅の世界ではあります。
いや教えてくれるのではなく、自分が考える世界ですね。
本著はこれまでやや難解だとされていた十牛図を実に分かりやすく解説してくれています。
私も、何か初めて十牛図を理解した気分になっていますが、
何はともあれ、本著は読むのが目的ではなく、「牛を探しにいく」ためのマニュアルなので、
その手順をしつかり再確認するのに最適だと思います。
是非、ご一読を!