ビジネスの演出力 芝居作りのノウハウを仕事に活かすコツ | 考える道具を考える

考える道具を考える

The instrument which I think

私の友人に小劇場の演出を続けている男がいる。
彼は芝居のシナリオを書き、舞台を創り、演じてもいる。

3ヵ月に一度程度、小さな劇場で上演する。
得意とするテーマは、日常の中の人間ドラマ‥というところでしょうか。


彼のもう一つの顔は、
企業の人材教育のインストラクター。
企業内研修の責任者として、毎日、研修の仕事をつづけている。


彼との対話の中でいつも感じることは、
ビジネスの現場における表現力の欠如という要素の指摘が多いこと。

彼は、芝居づくりで得たノウハウを、ビジネスの現場にも活かそうと奮闘している。

‥‥

芝居づくりは、まさに総合力。
シナリオがあり、演出があり、舞台美術があり、音楽があり、そしてなによりも
演じる役者がいる。

芝居がうまく行くかどうかは、舞台に関わる個々人の役割がまっとうされてた上で「全体の調和」が成立しているかどうかにかかっている。演出家の手腕が問われるのは、この部分でしょうね。

そして、この「個と全体性の調和」を、
ビジネスの現場にも活かそうとしているのが彼の努力の方向性なのですね。
その視点から、彼は、ビジネスにおける「表現力の欠如」を痛感しているのだという。

   ‥‥自分が伝えていると思っている言葉が本当に伝わっているか?

   ‥‥自分の気持ちを体で表現してみて、それが伝わるか?

   ‥‥自分の笑顔が、相手の表情をどのように変えるか?

   ‥‥相手を動かすほどのインパクトのある依頼の仕方とは?

   ‥‥悲しさの共有のために自分が伝えたようとする方法は、言葉? 表情? それとも‥


私は彼の努力の方向性に強く共感しながらも、
時々皮肉を込めてこう言います。

   演技的に表現しようとする試みは、日本人の恥のDNAには向かないのでは?

すると彼は言います。
   でも自分が恥ずかしいと思っていることが、相手に伝わっていなければ、
   それはあくまでも自己満足でしかないのでは?自分の感情が、
   相手に伝わらなければ、それはその感情が存在しないことと同じ‥。


そして、私はさらに付け加えます。
   伝えたい、という気持ちは、自分の心の中のどこから来るのか‥‥
   伝える表現する能力を鍛える前に、その在り処を「自分に聴く」ことが大切なのでは?


この言葉に、彼は、ただ静かに首を横に振るだけでした。‥‥

   確かに、伝えることは難しい‥‥私も表現力を鍛えなければならないのでしょうね。きっと。