将棋の勝負は常に一手の争いだ。
かつて大山康晴名人は、その圧倒的な強さについて、そして、将棋に勝つ秘訣を聞かれてこう言い放った。
‥‥一手勝てばいいのです!
プロの将棋の世界では、大差の勝ちも負けもほとんどない。
どんなに偉大な名人でも、一手の勝ちを読みきっていく。
将棋は、一手ずつしか指せないのがルールだから。
ところで将棋は、勝負がつくと「感想戦」を行う。
まあ、負けたからといって、将棋盤をひっくり返して帰ってしまいたいという悔しさを押し隠して、
冷静に今終わったばかりの一局を振り返るのだ。
これが将棋の勝負の美学なのですね。
そして、いつも思うことは、
この「感想戦」では、勝者より敗者のほうが饒舌な場合が多いということ。
この局面では、こういう手があった‥‥
いやいや、そう来た場合は、こういう風な反撃の手もある‥‥
しかし、その場合は、形勢は分からない筈‥‥
新しい戦いをしているようなものだ。
どちらも、一手の指し方の違いによって、
勝負は激変してしまうことを知っている。
だから、敗者は饒舌なのだ。
この勝負は負けたが、勝つチャンスはあったのだと‥‥
負け惜しみではなく、真剣にそう思っているところが、
将棋の世界にのめり込んだ人間の、志向性の高さなのかもしれない。
NHK杯将棋トーナメントも、いよいよベスト4に名乗りを上げる棋士が揃ってきた。
羽生二冠が負けてしまったので、決勝に残るのは、佐藤康光前回NHK杯優勝者と渡辺明竜王の顔合わせになるかもしれないと、勝手に予想しています。