
教育、コミュニケーションの専門家である斉藤 孝先生(現在明治大学文学部教授)の最新著作「フロイトで自己管理」(角川新書 2008年1月刊)を読んだ。
フロイトをこんな風に解釈する方法もあるのだなと、妙に関心しましたね。
この著作は、一言で言えば、不機嫌社会に対する警鐘を鳴らしている本。
特に私が関心を持ったのは、フロイトの解釈の方法だが、
むしろテーマ的には、フロイトの精神分析学の一部を活用して、
人間が大人として成熟することによって、
キレたり、不機嫌であったりする気分を乗り越えられるという
極めて単純に図式化して、前作の「ご機嫌」な気分の大切さを補っているのかもしれない‥
と思ったりしました。
「現実と付き合うことは、自分を活かすこと」(第1章)‥では、
フロイトの「快感原則」と「現実原則」という対立概念を応用して、
人間の本質的欲求である「快感に対する欲求」は、
社会化されることによって登場してくる「現実の壁」によって阻害されるので、
その現実とどのように折り合いをつけるかが重要だと説いています。
また本著の最大のメインテーマだと思われる「喪失と断念」(第6章)では、
フロイトの精神分析の原点であった「喪の仕事(モーニングワーク)」について触れている。
‥‥喪失を受け入れることができないと、心の均衡が保てなくなる。
つまり、対象への固執が、自己の心的エネルギーを、現実から遠ざける危険性を指摘し、
現実のなかでの、喪失の受け止めの重要性について説いているのですね。
読後の感想は、残念ながら、これはフロイトの研究書ではないということでしたね。
著者も書いているように「フロイトを徹底して自己管理術の師として捉えてみた」ということなのでしょう。
とはいえ、斉藤先生の「質問力」や「コミュニケーション力」という著作に共感した私ですが、
さすがにこれだけ多くの著作を一気に出版すると、
残念ながら個々の著作の内容は薄まっていくのは否めないと感じさせた一冊でした。