「脳と日本人」(文藝春秋刊)の続きの続きです。
松岡正剛さんと茂木健一郎さんの対談の中で、
「普遍性をめぐって」という章の中に、
茂木さんのこんな発言があります。
‥‥松岡さんがつくられて名文句に「香ばしい失望」という言葉があります。断念することでかえって自由になれる、前に行けるということがありますよね。
‥‥ぼくは、文学というのは、そもそも断念から始まるんじゃないかと思っています。
この「断念」という言葉は、人間が何かを成し遂げることに通ずる重要な体験だと思っていましたので、このくだりには大変共感しましたね。
松岡さんは、この茂木さんの発言を受けて、「21世紀は‥何を断念するかということが選べるのが大事です。」と返しています。
但し、この断念という概念には、様々な思いが込められていますね。断念するには、夢中になって取り組む自分なりのテーマがなければならないし、そのテーマに対して、ある種の昇華を体験していることが大切だと思います。その営為の中で、しかしながら、継続していくことの困難さに直面していく。
その時に、「持続していくことだけが善である」という亡霊に縛られるのではなく、「中断」あるいは「断念」することで見えてくる「もう一つの世界」があるのかもしれないと捉えています。
間違っても軽々しい「中断」ではないのですね。