いつも秋から冬になる季節になると、
私は大好きな詩人 田村隆一さんの詩集を読みふける。
この30年間、ずっと私の心情に轟いているフレーズがある。
針一本
床に落ちてもひびくような
夕暮がある
卓上のウィスキーグラスが割れ
おびただしい過去の
引出しから
見知らぬカード
不可解な記号
行方不明になってしまった心の
ノートがあらわれてくる
(「恐怖の研究 補遺」から)
この真空のような感覚が、
20代の頃の感性に響きわたった。
何故、このフレーズが、いつまでも私の言葉の世界の中に留まっているのか?
震える小鳥の舌‥震える翼‥
田村さんは、こんな表現の中に、一つの時代を、暗い時代の中にいる自分の感性を見つめていたのだろうと、思っている。
時がどんどん流れ、現代の極彩色の世界には、
昼も夜もなく、いつまでも幻想の光が流れている。
‥‥
そして、今日、昨夜の痛飲のお陰で、
まだふらふらする頭の中に、
言葉のない世界から、こんなフレーズが浮き上がったのでした。
おれは小屋にかえらない
ウィスキーを水でわるように
言葉を意味でわるわけにはいかない
(「言葉のない世界」から)
私は、昨日の深夜‥‥言葉のない世界への入口に立っていたのかもしれない。