羽生善治二冠 逆転勝利を掴んだ驚異の粘りを見た NHK杯将棋トーナメントを見て | 考える道具を考える

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羽生
 10月14日放映された将棋NHK杯争奪戦で、羽生善治二冠が驚異的な逆転勝利を演じた。

 解説の加藤元名人が思わず‥「ああっ、これはとん死ですね!」と叫んだのが印象的でした。それくらい驚くべき羽生さんの逆転劇だったのです。(ちなみに将棋でとん死とは、戦いが終結に向かっている局面で、ほとんど勝負が結している最後の最後に勝ちと思われていた一方の王様が詰んでしまうこと)

 将棋だけでなく勝負事は、最後に下駄を履くまで分からないといわれることが多いですね。特に将棋の勝負は、一手ごとに交互に指して行くので、どんなに有利に戦局が動いていても、最後に相手の王様を詰ませるまでは、何が起こるかわからないといわれています。

 昨日の羽生善治二冠と中川大輔さんとの戦いはその代表といえるでしょう。解説の加藤元名人が、「NHK杯戦の歴史に残る大逆転の勝負といえるでしょう」と語ったように。

 ‥‥

 さて、この逆転劇を興奮の中で見ていた私は、その前の週に私の大好きな谷川浩司九段が惨めな負け方を見ていたためか‥戦いの途中で、今回のトーナメントは、有力選手が次々敗退していくのではないかと、「思い込んで」いました。

 中盤の戦いで圧倒的優位に立った中川さんが、間違わなければ勝負は決定的な差がついていた。一手一手、羽生さんの王様が追い込まれていくのを見ていて、「これは完敗だな」と思っていたのです。ところが中川さんが優位に進めている戦局の中でも、「もしかして」と思わせるような表情を羽生さんは崩していなかったのでした。

 もしや、最初から「詰みの形を読んでいた?」と暗示させる表情だったのです。そして、結果は、そのとおりになった。

 感動でしたね‥‥最後まで「諦めない」という姿勢。この粘り。思い込みの排除。無心。絶対ということはないという心理戦。中川さんが、最後に見せた「驚きと悔しさの混交した表情」を見ながら、人生という勝負も、最後まで「諦めない」ことがいかに大切か‥そんな当り前としか思えない言葉を噛み締めてしたのでした。