日本の戦略参謀 瀬島龍三さんから学ぶもの | 考える道具を考える

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 今年9月4日、瀬島龍三さんが老衰で逝去された。かつて、小説家山崎豊子さんの「不毛地帯」のモデルになった方と言ったほうが分かりやすいでしょうか? しかし、瀬島さんの、軍隊時代から伊藤忠商事会長時代、そして政治の世界での一連の評価は様々です。

 私は、現代日本において、これだけ大きな「参謀」が存在したことという一点において、興味深く捉えているのですが‥‥。

 ‥‥

 特に、情報戦という視点で、瀬島さんの功績は大きいと思っています。

 それは、私が、その昔、瀬島さんにインタビューをした経験からもった印象が基になっています。当時、商社に所属していた瀬島さんは、そのお話しの中で、「情報は事実の積み重ね」ということを強調されていたことを鮮明に覚えているのですね。

 関東軍という言葉のイメージは、今の日本人にとっては侵略の先方、あるいは戦争犯罪などと良いものではありませんが、瀬島さんは、当時の関東軍の情報戦略参謀として活躍していたのです。

 そして、敵国ロシア(当時はソ連?)の動向を探るのに効果的な情報収集の方法は、「地方新聞の一行記事を読み続けること」ということでした。つまり、高度な国の戦略は、地方の小さな動きを見ていけば分かるというもの。

 例えば、牛馬を国が統制し始めたとすると、地方新聞には、誰それさんのお宅の馬が献上されたとかの記事が出ているわけです。その事実の報道をくくっていくと、国の方針が分かるというものですね。誰それが結婚したとか、道が作られたとか‥‥これらの「動き」の事実こそが、口伝えにやってくる情報より確実な「情報」だと‥‥。

 「敵を知らずんば‥‥」孫子の兵法ではありませんが、敵を知るものこそ、情報戦の勝者となる。敵は、毎日何を食べ、どんな服装をし、どんな事に興味を示し、何に喜び、どんなことに悲しむか‥。情報戦とは、敵そのものになりきって、その価値観で物事を見てみるということなのでしょう。

 ビジネスの世界でも、既に敵は国内にあらず‥‥ですね。国際社会の中にあって、日本のビジネスの競争を勝ち進んでいくには、敵そのものを理解しなければならないということ。インターネットによる情報のグローバル化とは、すなわち、世界の国々の日常の情報を拾うことなのかもしれない。

 しかし、今の日本の組織の中で、グローバルな情報参謀の存在は、果たしてあるのかどうか‥‥そのあたりは、分かりません。