死との出会い
父が亡くなった。電話の向こうの医師の声が震えていた。
死を告げられたその事実より、医師でも声が震えることに驚いていた。
一人の人間の死は、それだけ衝撃が大きいと知った。
病院に到着した時、小さな個室に安置されていた父を見た。
静かだった。額に手を置いた‥冷たいが、父を感じた。
「おぉっ!」 いつものはにかむ様な挨拶はなかった。
戦争を体験し、何人もの戦友を戦場でおくってきた父は、
戦争のことを子供に話そうとしなかった。
死は沈黙‥‥その静けさこそ、雄弁。
額から手を離した時、父の人生の時間が、すっと流れ去っていくのを感じた。