世界的マジシャン 前田知洋さんの「距離感」 | 考える道具を考える

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前田さん
 日本人で世界的なテーブルマジシャンの一人前田知洋さんが、「知的な距離感」(かんき出版刊 2007年8月)という著作を出版した。

 前田知洋さんといえば、ハリウッドのマジック・キャッスルなどに出演した世界的に有名なマジシャンだ。今、私は、テーブル・マジックと書きましたが、これは正確には「クロースアップ・マジック」というらしいのですね。要は、半円形のテーブルに観客が5名程度腰掛けてその前でカードマジックなどをやるものです。

 この「知的な距離感」という著作は、マジシャンとして、お客様に接する場合の様々なノウハウを紹介したものですが、その内容は、マジックという「騙しあい」に潜む人間の深層心理をついた仕掛けの妙について書かれたものですね。そして、そこで、マジシャンとしての仕事から得た、人間関係の信頼性に焦点を当てて、実生活やビジネスや男女のお付き合いまでの様々な領域での応用についても言及しているのが特徴です。

 ‥‥それにしても、この著作のコアのテーマになっている人間のプライベートエリアという捉え方には感心しましたね。人間が不安を持って警戒するエリアは様々で、人は自分の正面に対面した時に最も警戒感が強くなるそうで、その警戒感を、どのように溶解していくのか、マジシャンとしての仕事の中から解いていきます。

 マジックはマジシャンと観客との共犯関係によって成立する。‥前々から、私は確信しているのですが、この著作を読んで、マジックが成功するかどうかは、それ以前の「信頼関係」の作り方にあるのだという指摘には驚かされましたね。

 NHKのプロフェッショナル達‥‥という番組でも、脳科学者茂木健一郎さんとのやりとりが興味深く行われていましたが、マジックは、人間の脳を最も活性化させる‥という指摘に、肯いたのでした。