日本的幻想の画家 野田弘志さんの「非時」の浮遊感覚 | 考える道具を考える

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野田弘志
 この作品は、画家 野田弘志氏の作品《TOKUJIKU(非時)ⅩⅡWing》の一編である。1993年の作品で、一連の作品により、第12回宮本三郎記念賞を受賞したものですね。

 野田さんの絵を見ていると、やはり「幻想」という文字が浮かびます。但し、そこには、潜在的な意識の世界をシンボリックに描くダリやエルンストやシュールレアリスムの大家のような幻想ではなく、どこか日本的な「時間」感覚の中に浮遊している錯覚の味わいがあります。

 野田さんの作品は、初期の頃から「黒」が基調となっていました。背景の黒に溶け込んでいってしまいそうな静物、果実、鉱物。それが、心の闇という時間の中に浮かんでいる絵を見ていると、どこか忘れてきてしまった心の在り処に戻してくれそうな気分になります。

 野田さんの作品は、豊橋市美術博物館2階の常設展示室に展示されています。このコーナーの紹介には、以下のこんな文章があります。少し長いのですが、さすがによく纏っているので転載させていただきます。

 ‥‥‥1990年からはTOKIJIKU(非時)という連作が開始され、白や灰色の背景に化石や貝殻、骨、羽、器物などを配した作品をあらわします。この題名は万葉集に出てくる「ときじくのかくのこのみ」から来ており、「いつでも芳香を漂わせる実たちばな(=橘の実)」、または「不老長寿の木の実」を指します。ここで言う「ときじく(非時)」とは時間を超えたものと解釈され、時間の流れの中で滅びゆく存在(=生物)である骨や化石を描くことで永遠の一端を画面にとらえようとしているのかもしれません。‥‥‥