
誰にでも、忘れられない過去がある。
それは、音楽や自然の風景や、人の温もりを伴って、昇華された静止画として脳の中に刻み込まれているように‥。
‥‥
写真は、日本海の落ち日。新潟県上越市。その砂浜の先、水平線に落ちていく太陽の、もの悲しげな揺らぎは、私の心の中に、いつまでもいつまでも残照として、淡く美しく‥。
二十歳の頃。私は、この砂浜で、地元の18歳の少女と出会った。華奢な体と、腰まである髪が、静かな海岸に漂う風に揺れ、砂浜のこちら側に坐っている私に向かって、そのシルエットは、いつまでも、天高く手を振っているのでした。
‥‥
その少女は今どうしているのか‥。今もこの海岸の近くで暮らしているのだろうか? それとも、東京に出てきて、都会の生活の中で、自然とはかけ離れた生活を送ってきたのだろうか? あるいは‥‥。
記憶の中で手繰り寄せようとする消息。私の中の日本海の夕日は、私の学生時代の一つの悲しい記憶として、そう、時間がとまったままなのです。
誰にでも、忘れられない過去がある。
それにしても、最近撮影されたこの写真‥‥30年以上も前の上越市五智の海岸の姿と、ほとんど変わっていないのです。一体、どれだけの人が、この夕日を見ながら、恋愛をし、友情を交わし、別れを経験してきたのでしょうね。
ああ、この写真、見るのではなかったな!