
東京新橋駅前。通称「機関車広場」と呼ばれる日比谷口前の広場で定期的に開催される古本市に立ち寄った。
勤め帰りの時間。仄かにあたりは暗くなり始めていた。すると、煌々と輝くサーチライトではなく、まるで裸電球がそのまま空中に吊り下げられた古書店の島々が、あちらこちらに点在するのが浮き上がってきた。
何だか、1970年代そのままだな‥。古本市だから、薄暗さが必要なのだろうか? これでは、ブック何とか‥などには勝てっこないな‥などと思いながら、小さな島から島へゆっくりと歩みながら、古書を眺めていた。
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日本文学全集、画集などを、手に取りながら、昔の本の活字がこんなにも小さかったのか‥と驚きながら、歩いて回った。(多分、古いから活字が小さくなったのではなく、自分の視力が衰えたから、活字が見えなくなっているのだろう‥と思いながら。)
そんな雰囲気の中で、あの「ガロ」を見つけた。「おおっ、ガロか‥‥」。数冊のその漫画雑誌は、丁寧に透明のビニールで包装されて、三段の書棚の下の段に並んでいた。
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「ガロ」という漫画に魅了された時代。「ガロ」が、その革新性を持って、若者達に熱烈に歓迎された時代があった。白土三平さんの「カムイ伝」で一世を風靡し、その後、林静一、つげ義春、永島慎二などの個性豊かな作家を世に輩出していった漫画誌でしたね。
そこに置かれていた「ガロ」は、1980年代の白土さんの時代の数冊と、1990年代の新生「ガロ」の時代のものだった。
そういえば、「ガロ」を出版していたのは、長井さんという伝説の編集者だったことを思い出した。その出版姿勢に強い一貫性を持ってこの漫画雑誌を発行していた青林堂は、その後、その頑固さゆえに時代に取り残されていき、結局、M&Aで売却。さらに編集者の分裂騒ぎから、引き取った新しいコンピュータ系の会社も倒産‥などといった悲惨な結果になっていったのを思い出しました。
21世紀の初頭。相変わらず継続されている新橋駅前の古本市。そこに、ほんの数冊並べられた「ガロ」を発見して、しばし、立ち尽くしたのでした。
‥‥若い頃にわかれた恋人に、偶然街角で出会ってしまったような‥嬉しいような、悲しいような感覚‥でした。