澁澤龍彦「幻想美術館」に触れて | 考える道具を考える

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 フランス文学者 澁澤龍彦さんの「幻想美術館」(平凡社 2007年4月12日刊)が刊行された。

 巌谷国士さんの監修による。

 澁澤龍彦さんの生涯に亙る活動にまつわる「芸術作品」の誌上美術館で、マニエリスム、シュルレアリズム、日本美術、人形、写真などが、著者の生涯の思索の過程の中で登場している。

 澁澤さんは、「血と薔薇」という特異な雑誌を創刊するなど、日本の芸術世界の中では異端に属する天才だった。フランス文学者であり、翻訳家でありながら、そうした異端の世界を批評しつつ、人間の負の部分の意識や意味を解析し、その興味の対象は美術だけでなく文学、哲学、批評、映像、写真、など様々な領域に亘っている。

 私がまだ学生の時代、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」に出会った時、わが日本にも澁澤龍彦という存在があったことを知った。その批評の世界にのめり込んだ時代は、「幻想の画廊から」や「夢の宇宙誌」などに触発され、人間の意識下の世界に渦巻く想念のようなものを表現すると、こうなるのものか‥と感心したのを記憶している。

 そして今、この美術館を手にとって、有名な鎌倉の著者の書斎の写真を見るにつけ、明らかに、その時代の自分の関心の領域を思い浮かべていることに気がつく。

 ベルメール、ハンスの擬態人形の発見から四谷シモンの人形の世界まで。人間の想像力の無限の可能性について、改めて考えさせられる一冊として、大切にしていきたいと思ったのです。