窓と孤独 詩人田村隆一に帰る瞬間 | 考える道具を考える

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窓
 ‥‥窓のあるところに孤独はある‥‥


 このフレーズは、詩人田村隆一の詩のフレーズにはない。田村隆一全詩集を、何度も何度も読んで、その分厚い詩集を閉じた時、私の頭の中に残ったフレーズなんですね。

 今も、暗誦するように残っている正確な詩篇は‥

    『幻を見る人』 

    空から小鳥が墜ちてくる
    誰もいない所で射殺された一羽の小鳥のために
    野はある

    窓から叫びが聴えてくる
    誰もいない部屋で射殺されたひとつの叫びのために
    世界はある

    空は小鳥のためにあり 小鳥は空からしか墜ちてこない
    窓は叫びのためにあり 叫びは窓からしか聴えてこない

    どうしてそうなのかわたしには分らない
    ただどうしてそうなのかをわたしは感じる

    小鳥が墜ちてくるからには高さがあるわけだ 閉されたものがあるわけだ
    叫びが聴えてくるからには

    野のなかに小鳥の屍骸があるように わたしの頭のなかは死でいっぱいだ
    わたしの頭のなかに死があるように 世界中の窓という窓には誰もいない

 ‥これが正確な「四千の日と夜」に収録されている「幻を見る人」の冒頭のフレーズです。

 雨が激しく降る午前。どこか情緒的になるその瞬間に、いつも私の中から、「窓と孤独」の言葉が不意をついて出てくるのですね。

 そう、何故そうなのか、私には分からない。ただ、どうしてそうなのか、私は感じるのです。今年も、もう春だというのに‥‥。