
吉本隆明さんの最新著作「真贋」(講談社インターナショナル 2007年2月刊)を読んだ。
比較的読みやすいエッセイ風の批評だ。吉本さんの著作にしては珍しいタイプかと‥。
その中に「批評眼を磨く」という一文がある。
‥‥僕が批評眼を磨くためにやってきたことは、ただ考えるとか、ただ本を読むというだけではなく、体の動きと組み合わせて修練するということです。
‥‥たとえば、歩きながら、いい考えが思いがけなく浮かぶことがあります。ニーチェの言葉に、「歩きながら書かれた文章でなければ読む気がしない」というのがありますが、まさにそのとおりだと思います。
そして、学者の文章と批評家としての吉本さんの文章の違いは、ボクシングで相手を倒す技術の違いと同じたといっています。
つまり、どんなにハードパンチャーでも、全てのパンチを全力で使っていては、相手はそのハードさに慣れてしまい倒れないが、逆に、軽いジャブを交えながら、ここぞというときに強いパンチを出せば、倒すことができる。自分の批評は、こういう強弱の使い分けによって独自性を出すことができている。そこが学者との違いだ。
こんなことを書いていました。
より強い共感性を呼び起こすには、確かに、強弱のリズムや独自の批評的視点が必要ではありますね。客観的といわれる知識やデータを積み上げても感動することは少ないが、日常の瑣末なことには感動することが多いのも、こういう人間の肌感覚に、人は強い共感を得るからだと思いましたね。
そうそう、日常の些細なことに、強い関心を持って観察し、批評してみよう。そこに、何かが見えてくると信じましょう。‥‥私達の世代は、吉本さんの意見には、無条件で信じてしまう癖があるようです。でも、これって結構快感なのです。
著作の扉にある、この吉本さんの最新の写真(撮影は渋谷陽一氏)‥‥凄くいいと思いませんか?