
今年の感動の第三弾は、ダリ生誕100年回顧展で、ダリの幻想絵画の「原風景」を見たことだろう。
この作品は、「奇妙な廃墟の中で自らの影の上を心配でふさぎがちに歩き回る、妊婦に形を変えるナポレオン」と題された1945年制作の一品。
丹念に描かれたこの油彩画は完璧な幾何学的造形によって構成され、多くのモチーフが描かれた舞台美術的な作品であり、意識差異と図形的な象徴に富んでいる‥と解説されている。暗示と想念に溢れたダリの代表作でもあるわけですね。

さて、下の岩の写真は、ダリの故郷、スペイン・カタルーニャ州アンポルダ地方、ポルトリガドにある奇岩の一つ。ダリは、この海岸に点在する不思議な岩からインスピレーションを得て、「奇妙な‥」という作品を創造しているのですね。
まあ、いわば、ダリの原風景には、自然の造形の不思議な形状が実際に存在していて、それが、ナポレオンという実在の英雄の心的風景と対照しながら、いわば絵画のオートマチズムの手法をとりながら描いていったということなのでしょう。様々な登場人物がリアリティある個の描写を伴って劇的空間として仕上げられていったといえば、言えるのでしょう。
奇才ダリ。しかし、その心のキャンバスには、こうした自然風景の原型が存在していた、ということの発見‥‥これが今年の私の感動の三つ目となります。
‥‥だから、自分が見ているもの、観察している風景、人の表情などは、自分の記憶の底にしっかりとどめておきたいものだと思ったのでした。