コミュニケーションを円滑にするためには、基本的に相手の話に耳を傾ける能力が必要だといわれていますね。傾聴。話を聞く力。
この能力は、人間が本能として保有しているものではなく、社会化される中で習得していくスキルなのだそうだ。つまり、聞く力を持とうとする「意識」が大切で、そうすると「ノウハウ」をトレーニングによって、身に付けることができるのだそうだ。
ところで、私が読者登録している海保博之先生ブログは、認知心理学に関連する発言が多くとても勉強になります。海保先生は2002年に「やさしく、わかりやすく、簡潔に表現する」 と題する論文をまとめています。
これは、看護の現場において、看護師さんが患者とどう向き合うか、どのような「聞くスキル」を活用すべきかというテーマを扱ったものです。
その一部を紹介すると‥‥
‥‥看護の現場では、ねらいによって、表現を次の3つ形態に分けることができる。
一つは、癒しを目的とした表現である。もっぱら、患者を慰めたり、元気づけたりすることをねらった表現である。
2つは、説明を目的とした表現である。看護行為のねらいを教えたり、自分の思いをわかってもらうための表現である。
3つは、指示を目的とした表現である。相手に自分の指示した通りに何かをしてほしいときの表現である。
そして、まず、‥第1 癒し系の表現はやさしさがポイントであるとして、‥‥心理学的に、やさしさにもっとも近い概念としては、「共感性」がある。相手の気持ちをどれほど思いやれるか、それを自分のものとして感ずることができるかである。
‥そのためには、表現させるだけで癒しになるという観点を指摘し、‥カウンセリングでは、もっぱら患者とカウンセラーとの言葉のやりとりを通して、患者の心の悩みを解消することをねらう。何故か?
‥人は話すこと/話を聞いてもらえることで心すっきりということがあるからである。話すことのカタルシス効果である。
‥もう一つは、悩みを、言葉という客観的で感情的には中性的なシンボルで表現することで、悩みを自覚できるようになるからである。患者の悩みは、自分自身で悩みの本体がわからない不安から発していることが多い。悩みの本体が自覚できれば、その不安から逃れられるし、自分なりの対処もできる。
‥さらに、耳を傾ける。患者から悩みを引き出す技術として、傾聴がある。
‥傾聴とは、相手の言うことに耳を傾けることである。これなら誰にもできそう。しかし、相手の前に座って、「さー。あなたの悩みを話してください。いくらでも聞きますから」では、うまくいかない。傾聴にもそれなりの技術がある。
‥まずは、やさしさ/共感性をどう表現するかである。
‥ここは、もっぱら、非言語的な表現に頼ることになる。からだ全体で、あるいは顔の表情や視線で、相手を受容することを表現する。
‥その上で、相手の話を反復、確認、要約してやる。話すことを促したり、安直な感想や解釈や結論を出さない。ましてや、こうしたらどう、といった指示は、少なくとも初期の段階では厳禁。
‥‥以上長い引用でした。
ふむ。どうですか? 共感性は、コミュニケーションの大切な潤滑油。そして訓練によって看護師さんたちは身に付けていこうとしているわけですね。具体的に、どんな場面で、どう表現するかは、次の課題になるでしょうが、まずは、訓練で習得できる「聞くスキル」に挑戦してみる価値はありそうですね。