オレステス 終りのない復讐の悲劇 | 考える道具を考える

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 オレステス
 世界のニナガワの最新舞台‥オレステスをBunkamuraで観た。

 主役オレステスは藤原竜也さん、その姉エレクトラは中嶋朋子さん。吉田剛太郎さん、北村有起哉さん、香寿たつきさん、横田栄司さんなど共演のキャストも味わいのある方々だった。

 芝居を観るに先立って、翻訳者の山形冶江さんの特別セミナーを受けていました。ギリシア悲劇のうち、あまり知られていない今回の作品を観るにあたって、ストーリイを追ってくのに少々苦労しそうだったので、事前勉強をしたわけだ。

 山形さんの予想外の漫談的解説も手伝って、この予習が役に立った。つまり、父親殺しの母親を、オレステスが殺害するという事実を縦軸に、親戚各位が入り乱れて、権力の座の奪い合いと法(絶対権力)との解釈の狭間で揺れ動く人間心理のドラマを理解し、その背景を理解する上で、とても役に立ったわけですね。

 ニナガワ演出でも、今回は、台詞が非常に聞き取りやすく、分かりやすく、そして、舞台の入り口のシーンでは必要以上にその関係図を台詞の中にまぶしていたので、事前知識がなくても分かりやすく構成されていたのは意外でした。

 またコロスの人々は今回は女性だけで構成されていました。老若合わせた女性のコロスは、市民の声をシンボリックに代表し、なおかつ、大衆の心の動き、例えば悲劇的なめぐり合わせのオレステスに同情しつつ、ある種の客観性を保った市民の感情をうまく表現していたと思いましたね。

 ギリシア悲劇の持つ「世界観」が、今回の舞台を通じて、何かわかったような気がしたのも事実でした。

 民族、宗教、血縁、権力、そして近親の愛憎‥。ドラマのシチュエーションとしては、このオレステスは分かりやすいものだったのかもしれませんね。その後のシェイクスピアのハムレットと共通する筋書きを彷彿とさせる物語とはいえ(もっともオレステスのほうがずーっと昔に書かれているのですが‥)、この複雑な復讐の連鎖を、アポロンという太陽神によって裁かれて終わる神話劇の展開は仕方ないとして、最後の演出で現実に引き戻そうとするニナガワ演出の賛否は分かれそうだな‥とも思ったのでした。

 ともあれ今回は、藤原竜也さんの成長が感じられましたね。彼にとっては、少年から大人に成長していく、一つの大きな分岐点の作品になるかも知れないと思ったのでした。