画ニメ 萩原朔太郎「猫町」を観る | 考える道具を考える

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猫町
 画ニメ(ga-nimeと読む)という新しい試みが幻冬舎で行われている。

 版画とか絵画をベースとしてアニメーション化する試みといおうか、あるいは、静止する版画の世界が、ゆるやかに「動き」を加え連続した影絵といおうか‥、音楽と朗読によって展開される静止画とアニメーションの中間に位置する試みといおうか。現代紙芝居とでもいおうか?

 まあ、私は、この出版の新しい試みに興味があったのではなく、朔太郎の小品「猫町」が、もともと好きだったので、思わず買ってしまったといったほうがいいのだが‥。

 ‥‥

 朔太郎は、「月に吠える」や「青猫」で有名な現代口語詩を創造した詩人であり、感傷詩人で有名だ。かつて、前橋出身の作家と交友のあったことから、一時期朔太郎の作品を一生懸命読んだが、実は、この小説「猫町」が最も印象深かった。

 主人公は、モルヒネ中毒の詩人。散歩する詩人の眼に映る街の風景は退屈で変わり映えのしないものだったが‥方向音痴の詩人はある時、通常の散歩道から外れて「ある不思議な街」に迷い込んでしまう‥。

 その街の幻想的で新鮮な輝きに眼を奪われている僅かな感激をよそに‥気がついてみれば、そこはいつもの退屈な街‥‥街への入り口を間違え、反対から入り込んだだけの幻覚だったのだ‥といったお話。

 金井田英津子さんの版画がいい。町田康の朗読もいい。

 ところで、言葉で描かれた詩や小説には、読者としての私が、言葉を読むことによってイメージ化した映像や音楽の世界があると思ってる。私がある作品を読んだ時のイメージ、つまり脳の中に描かれた「猫町の映像」と金井田さんの描く「版画」とはまったく違ったものになっている。

 以前は、そういう意味で、小説や詩の映像化の試みには反対で、あまり観ることはしなかったが、改めてこうしたすぐれた作品を見ると、私のイメージの中にある作品とはまったく違った作品としてみることができるという「発見」があって、かえって楽しかったのでした‥・。

 この地味な画ニメの試みは、他にも多くの名作が新しい手法で再現されていて、結構楽しい。