
我が愛する詩人 田村隆一さんの詩について、続けよう!
中期に入って、「目撃者」という詩に出会った。「恐怖の研究」の3行で始まった私の詩との体験は、どこに向かおうとしているのだろうか?
針一本
床に落ちてもひびくような
夕暮がある
からどのくらい時間がたってからだろう。詩人は、いつしか、自己の内側の風景から、その内的心象風景を見ているもう一人の自分に出会う。それが「目撃者」だ。
長編詩の中の最も感じられるフレーズを引用する。
目撃者から
狙われている!
窓の外で僕は立ちどまる
こういう時だな 外套の襟をたてるのは
‥‥‥‥
‥‥窓の内側で倒れる椅子よ 僕の内側で倒れる不眠の男よ
恐らく最上の瞬間がおまえに硯きこみ果しなく問うだろう
聴かせてくれ 目撃者は誰なのだ!
‥‥‥‥
僕は窓から身を離す 歩かねばならぬ 選ばれた少数の窓をふたたびひらき
また閉ざすように 結末まできて目撃者は立ち去らねばならぬ
おまえの手から わたしの窓から
その窓とは何か? 窓の内側に見えている人物とは誰か?
詩人は、針によって感受した静寂の秘密を、自己の内側のもう一人の自分を目撃することによって、破ってしまおうというのか?
結末まできたら、目撃者は立ち去らねばならぬとは‥‥。
やはり、詩人は、見てはいけないものを、見てしまったのだろうか?