
詩人田村隆一さんの第二詩集「言葉のない世界」には、夢と言葉と意味が織り成す独特の世界が見える。
おれは小屋にかえらない
ウィスキーを水でわるように
言葉を意味でわるわけにはいかない
(「言葉のない世界」から)
日本酒を愛し、銭湯を愛した詩人は、日常の言葉の世界から、漆黒の意味を排除しようとする試みにとりつかれていたのだろうか?
戦後詩の試みがどのようなものであったのか、詳しくは分からない。
しかし、21世紀の現代にあっても、詩人の言葉は、意味を変えて私の心底に響き渡ってくる。
詩人は、何を見ていたのか?
‥‥
その答えが、次の第三詩集「緑の思想」にある。
もし人間に眼があるなら
ほんとうにものが見える眼があるなら
球状の子午線から
球状の窓から
球形の人間がなにか叫んだとしても
ふりむかないほうがいい
(「緑の思想」から)
果たしてこれが答えなのか? いや、まだまだ詩人の詩の昇華は、これからだ‥。