詩人 田村隆一 四千の日と夜 | 考える道具を考える

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田村隆一全詩集から

 恐怖の研究

    針一本
    床に落ちてもひびくような
    夕暮がある

    ‥‥‥

 たった3行のこの言葉に出会ったのは、私がまだ10代の後半の時だった。

 「四千の日と夜」という詩集の補遺に佇んでいたこの一編の長編詩の冒頭の3行だ。
 私の感受性は、この3行に泣いたのでしょうね‥。

 「針」に込められた「静」の落下のシーンは、言葉が映像を描き、音楽と静寂と響きを伝え、時間の不思議を教えてくれた‥。

 やはりこのシーンは夕暮れでなければならないのでしょうね。

 以後、貪るように詩を読んだ。しかし、この3行を超える詩篇にまだ出会っていない。


 ‥‥恐怖の研究の最後は、こんな数行で締めくくられている。

    針一本あるところ
    沈黙がある
    頭上の天使のさえぎるところ
    ふるえる舌がある

    搭が見える
    罪を犯すにはわれらの人生は長すぎる

    城が見える
    罪を償うにはわれらの人生は短かすぎる

 ‥‥ 

 私が最も愛する詩人田村隆一さん、ありがとう。