
サルバドール・ダリを体験するのに、一番いい年齢は、10代かもしれない。
1931年の制作とされるこの「記憶の固執(柔らかい時計)」は、ダリの最もダリ的作品のひとつで、私の記憶の中に眠っている絵画(シーン)の1つだ。
時計のシーンは寺山修司の「田園に死す」の映像の中での、「狂った柱時計」が印象深い。どうしても、故郷の家の中には、柱時計が必要で、そこで刻まれた「時」の記憶は、成長する子供の記憶の中で時を刻んでいくものと思っている。
しかし、いつしか、この柱時計は、硬質で機械的なリズムを失っていき、ダリの柔らかい時計のシーンに結実していくように思えてならない。枯れ枝に掛かった時計を見ていると、この荒涼たる非現実的な背景の中にある「時の不条理」すら感じるのです。
この絵の中からは、柱時計の時を知らせる「音」は聞こえてきませんね。