「さまよう刃」 | てこの気まぐれ雑記帳

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グータラ婆が気ままに、日々の出来事や思ったこと、感じたことを、適当に書き綴っています。なんでも有りの備忘録的雑記帳です。

今日は「さまよう刃」を観に映画館へ映画

今日もまた、ネタバレバレですm(_ _ )m


てこの気まぐれ日記-さまよう刃

ある夜の、娘から父への明るい声の電話「もうすぐ帰る。ご飯食べるから」。

妻を亡くし、娘と2人暮らしの父は仕事の手を休め、いそいそと晩ご飯の準備にかかる。

ごく普通の、平凡でささやかな庶民の平和……


翌日、娘の遺棄死体が見つかった。慟哭するのではなく、虚脱していく父・長峰重樹(寺尾聡)の姿が痛々しい。

警察に捜査の進展具合を聞くが、まだ何も分からないと答える先輩刑事・真野信一(伊東四朗)を不審な目つきで見やる若手刑事の織部孝史(竹野内豊)に、「遺族はどんなことでも知りたがるが、知れば知るほど苦しむことにも。あえて知らせないことがあってもいい」と真野。

監視カメラから車を割り出した警察は、未成年の中井誠(佐藤貴広)に事情聴取するが、中井はドライブしていただけだと主張していた。


長峰の留守電に、娘を殺したのは菅野カイジ(岡田亮輔)と伴崎アツヤ(黒田耕平)だと密告した中井に、警察は怖いが良心がうずいたのかと思ったら早とちり、中井にも狡い計算があった。


ともあれ伴崎のアパートを訪ねた長峰は、娘の死んだ真相を知り、苦しむことに。身をよじり、この世にも非ず嘆き悲しむ父の姿に、胸が締め付けられた。


長峰は、警察に手紙を書いた、「伴崎を殺したのは私です」と。

「ただ1人の肉親である娘は宝。娘がいたから生きる意味を持てたのだ。その宝を彼らは辱め、人間らしさのかけらもない残虐さで殺した。ただの肉の塊として扱ったのだ」

「伴崎は未成年。例え逮捕されたとしても、刑罰とはとても言い難い判決が下されるだろう。しかし、彼らによって生み出された『悪』は、永遠に私の心に残り続けるのだ」

「人を殺せば罰を受けなければならないが、今私は捕まるわけにはいかない。警察も分かっているだろうが、菅野に極刑を下すつもりだ」。


警察にとって、被害者だった長峰が一転、殺人の容疑者となり、さらに殺人を重ねる可能性のある危険人物になった。

菅野を保護し、長峰を逮捕すべく捜査を進めることになるのだが、織部は納得がいかない。

「それが法律というもので、我々は法を守るために働いている」という真野に、「我々は市民を守るためにじゃなく、法に傷を付けないために働いているのか? 正義とは何かと考える暇もなく、議論の必要さえないということか?」と、悩む。


菅野が長野に潜伏しているらしいとの情報で長野に入った長峰が宿泊したペンションのオーナー・木島和佳子(酒井美紀)は、自分も母を亡くして父と2人暮らしだと話したうえで「お父さんが復讐すること、お嬢さんは望んでいるでしょうか。警察に任せた方が…」と諭すが長峰は聞き入れずチェックアウト、和佳子は警察に通報する。

ところが、和佳子の父で猟友会員でもある隆明(山谷初男)は、怪我をした長峰に猟銃を渡し逃してしまう。同じく娘を持つ父として、長峰に復讐させてやりたかったのだ。


いまや銃をも手にした長峰逮捕に、拳銃所持が認められた。

動揺する織部に真野は言う。「我々の仕事は、長峰を撃つのではなく、長峰に撃たせないのだ」。


中井を使って菅野を川崎におびき出した警察。

菅野が川崎に現れると長峰に知らせた織部。

両者逮捕へ大布陣が敷かれたなかで、菅野を捕まえた長峰は猟銃を菅野の首に当て、片手で菅野の衿を掴んで周囲の人に訴える。

「この男は、私の娘を陵辱し殺した。我が国の法律では未成年者に極刑は望めない。だから私が審判を下し、極刑に処す」と。

泣きわめいて助けを求める菅野。

捜査班長は拳銃使用の許可を出すが、誰も動けない状況。そんな時、1発の銃声が…。


かつて「被害者である長峰の未来を奪う権利が我々にあるのか?」の織部の疑問に、「長峰にはもう、未来はないのだ」と答えた真野の姿が、そこにあった。


長峰の動かない静かな瞳と、菅野の衿をがっちりと掴んで揺るがない手。

訥々と語られる、長峰の真の思い。

――印象的なラストシーンだ。


全体を通して言葉も少なく、静かなイメージで進んでいく中で、足音や猟銃の音、息づかい、携帯電話など、音の使い方が効果的だった。

寺尾の、抑制のきいた、静かななかにも決意を秘めた演技が冴えている。

竹ノ内の映画って見たことなかったが、こんなに表現力あったんだ。


娘を持つ父だけでなく、娘を持つ全ての親の気持ちは長峰に傾くだろう、法治国家として云々…の以前に。

ここ数年、未成年者の凶悪犯罪が続き、少年法改正がされたが、復讐と許しの問題は、例えどんな法律を作ったところで、重くて難しく、簡単に白黒つけられるものではない。


益子昌一監督。


原作『さまよう刃』(東野圭吾・著)は角川文庫から刊行。

東野の著作はハズレがない。これはまだ読んでなかったが、読みたい本に追加しておこうメモ