集中治療室にて | 余生庵 カラスの晴耕雨・読ぶろく…クンセイが肴

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残り少ない余生をテキトーにいきていくブログ
◇監修 左上野 老鶴 ◇GM 経田野 横鋤 ◇照明 当代元 蔵志
☆余生を送っている人間が書いている記事ですので、恐縮ですが
 「記事更新頑張りましょう」といったコメントにはお返事できま
  せん。

目の前には、単車事故で手ひどい重傷を負った息子が横たわっていた。


ここ集中治療室のベッドの周囲には、私を含めて一族郎党、ほとんどが集まっていた。


医者からは「臨終までは時間の問題です」といった内容のけがの状況説明を受けたばかりだった。


父がうめくようにつぶやく・・・

「変わってやれるものならそうしてやりたい」


私は

「ほー、例によって大きく出たじゃないか!」

すかさず家内が、

「お義父様にあんまりじゃない」

「いや、親父はおチョーシ屋さんで、その場が丸くおさまればそれでいいと思って、日頃からあまりにも軽々しい発言が多すぎる。いまのだってきっとそうだ。」


「おまえ、親に向かってそのもののいいようはなんだ。私が孫の体を心配すれば、このくらいの言葉は、自然に出る。他の祖父であれば誰だってみな同じだろうさ」


「本当に、その気持に、嘘偽りはないんだな?」


「おまえも、相変わらずしつこいやつだな・・・」


「それが取り柄だと自分では思っているがね。」

私は親族に向かって「皆さんも親父の今の言葉お聞きになりましたね?」

一同、首を縦に振る。


私は、ナース・ステーションの奥に向かって、

「先生、看護師さーん。父が息子のために全臓器提供を申し出てくれました。体質が合うかどうかの検査をまずお願いします。」


奥から屈強な男性が二人出てきて、両脇から父を抱え込んで連れ去っていった。

父の体は完全に宙に浮いていた

父は何やら叫んでいたが、恐らく私の言っている意味が分からずパニックになって、いろんな罵詈雑言をわめきちらしているにちがいなかった・・・


202X年・・・・移植の臓器提供数が一向に伸びないことに業を煮やした内閣府、厚生労働省は、何らかの形で、本人から臓器提供の意思ありと口頭でも同時に2人以上の証人があれば、「全臓器移植」が成立との法案の公布を半年前に行っていて、今日がその実施日だったのだ。


私は父はそのことを忘れているか、しらないかどちらかだろうと考えていたが、やはり、あたっていたらしい・・・


恐らく、今回のことくらいでは、本人に「臓器移植の意思がある」などとは、裁判所も保険会社も認めてはくれないだろう。


理屈はよくわかっていますよ、ソリャ・・・