※この話の続きです。

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※するはずがなかったセックスをしてしまった後、

罪悪感とか恋愛感情とかを超越(?)して、

(または本能的・直感的に)

“またきっと会うだろう”と予感した時に

ふとこの詩を思い出したので、複製して載せました。

ビビッとくるかこないか、ぐっとくるかこないか、が

大事なんだよなぁ、、と思わせてくれる詩です。

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※このブログの続きです
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吉祥天遊女

吉祥天は
激しい欲情に苦しんでいた
御陵や古墳の貴公子たちを
夜毎訪れるのだが
満足させられなかった
豊かな頬を闇に浮かせ
両肩にたらした長い髪も寂しそうで
夢と気品に包まれた顔を
ややむっとさせ
今夜も御陵のひとつから
走るように寺へ急いだ
ところが
竹藪をめぐる道まできて
ばったりと男に遭った
立ちつくしていた男に
吉祥天はぐいぐい惹きつけられ
からだは熱くなって
甘い体臭が溢れでた
その香りを男は胸深く吸い込むと
腕を伸ばしてきた
満天の星を仰ぎながら
吉祥天は強い力に抱かれた
男が襟元を掻き分けて
雪の下の芽のような
小さな紅色の  に触れるのを
もだえのけぞってなすに任せた
そのとき
吉祥天のからだから
参詣人が供える
抹香の匂いがたち昇った
男はその匂いでかえって昂ぶった
男は思った
この静かにすぎてきた大和の野に
ふたりして濃密な匂いを醸し
此処に
地底に潜むる悪鬼邪神といわれるものを誘い出し
盲目や や一つ目 唖の境遇にある
それらの神々にせめて
今夜は遠慮のない舞踏を繰り広げさせたい
男は激しい勢いで
吉祥天を押しつけた
吉祥天の冠が藪のなかで
さやさやと鳴り続けた
その音をききつけ
不幸な神々は雀踊りしてはいだしてくると
ふたりを囲んだ
吉祥天の仰向く顔の上で
神々は った
その姿に刺激され
耐えきれなくなった吉祥天は
着物を脱ぎ捨てると全裸になり
しめつける男に
濡れてこりっとした唇を突きだした
やがて吉祥天の深いところから
歓喜のうめきが流れでた
貴公子たちではどうしても物足りなく
そのうえ 善男善女に十重二十重にとりかこまれて
抹香に燻されるので
さすがの吉祥天の欲情も
危うく歪んでいくところであったが
この男によって解放された
男が注いだ大地の油は
限りもなく吉祥天を充実させた
今後は人々に一日中とりまかれようとも
びくともしないのだ
吉祥天はますます艶っぽくなった
夜明けが近づいていた
再び会う夜を感じ合った
吉祥天と
男は
無言の挨拶をした
吉祥天は花のように上気しながらも
長い三日月眉ときれながの目尻をきりっと張り
闇の道を寺へと帰っていった

(賓日館における書道展にて)