「せっかく落ち着いた大人の男性になったと思ったのに。コンサートとか歌舞伎も良いねってメッセージで書いてきたのに、全然変わってないじゃないですか。まったくもう」
彼は、少し不満そうではあったが、だからといって無理矢理に私を押し倒すことなどはせず、不貞腐れもせず、持ってきた荷物を棚の上に置いたり時計を外したりしていた。その姿を、ソファに座ったままぼーっと見ていた。
彼が棚に置いた荷物の中に、彼が赴任先から持ち帰ったデバイスがあることに気がついた。日本では未発売のゴーグル型の機器で、いわゆる空間コンピューターだ。
「あ、それ試したいです!」
「うん、試そうか。」
私は急にワクワクしてきた。
理系同士・機械好き・SF好きとして、私たちは今までも色んな場面で意気投合していた。今回のこのデバイスは日本で未発売だったし、これまでの様々な経緯からこの機器には個人的にとても興味があり、性能を試さないという選択肢は無かった。
ほんの少し前までは私に抱きついたりしてきたのがまるで別人のように、極めてイノセントで洗練された動作と話し方で、そのデバイスの使い方を説明してくれた。
新しいコンセプトと設計のデバイスなので、使い始めるための設定が少し複雑だった。私はまるで、産まれて初めてパソコンに出会った人のようだった。
使う人ごとに、ハンドジェスチャーやアイトラッキングの設定を丁寧にやる必要があるために、
時間がかかった。
それに、それぞれのステップで私は何度か失敗したり戸惑ったりした。
そんな時、彼はいらいらすることもなく、
かと言って全て自分でサッサと終わらせてしまうこともなく、私が自力で操作に慣れるように根気強く手ほどきしてくれた。
そういう部分に私はグッときてしまう。
(この人って単にセックスしたいだけのガツガツした人なんじゃなくて、頭が冷静な時はきちんとした人なんだろうな…)と思えるから。
私はクールで理系脳の知的な人が好きで、家電量販店の店員さんなど、ややオタク寄りで何を聞いても打ち返してくるような人に惹かれる。
数年前にも、彼との間で似たようなシチュエーションがあった。あの時はラブホテルだったが。
※今これを読むと、自分がグッとくるポイントがワンパターンなことに気づかされる。
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