VRゴーグルとセックス ⑤

ラブホテルの部屋に入る。


「荷物こっちに置いたら?」

「はい」

「見て?これがVRゴーグルなんだけど、

ちょっと試してみない?」

「試してみたいです。私、実物を見るの初めてなんですよね。あ、でも観光地に行った時に、なかなか人間が行けない島の廃墟を見るというデモを、VRゴーグルで見ました。」

「そうなんだ。こっちは、もっとすごいと思うよ。こっちに来て、これを頭に付けて、これを両手にはめてみて。足元が危ないと悪いから、ここに来た方が良いかも。」


彼は、私にヘッドセットを付けて

周囲が見えなくなった私の肩を抱いて

そっと移動させた。


彼の触れ方はすごく優しくて

まるで高齢者とか赤ちゃんを労わるような感じだ。


そういう単純な事で、

とても紳士的で優しい人のように

自然と錯覚してしまう。


「ヘッドセット、意外と軽いですね。」

「そうでしょう。最初、少し設定があるから、

選択する時はここを握ってね」


そう言いながら、

ヘッドセットで目が覆われていて

実際の屋内は見えない私の手を握って

コントローラーの操作方法を教えてくる。

その手つきも、やっぱり紳士的だ。


丁寧で、優しい感じで触られると、

ラブホテルにいる事を忘れて

病院の検査などの

介助スタッフに助けられているようにも感じられる。


そのまま、VRゴーグルの中で

すごくシンプルなゲームをやって

VRゴーグルの中だけに見える3次元の立体を

掴んだり投げたり打ったりする体験をした。


思った以上にリアルな感覚を伴うものだったので、

「うわっ!」「すごい!」を連発していた。

また、『三丁目の夕日』のような空間映像も見た。


ひとしきり試して堪能し、

ヘッドセットとコントローラーを

体から外してもらった。


「すごく楽しかったです!ありがとうございました。なかなかお店とかのデモではこんなに堪能できないと思うから、ここに来た甲斐がありました」

「ふふっ、楽しんでもらえて良かった。」


気がつくと、ラブホテルのベッドの端に

2人並んで座っていた。

さっきまでは完全に、VRゴーグルのデモの

インストラクターのように、

周囲が見えない私の身体に丁寧に触れて

導いてくれるような

安心感のある存在だった彼。

さっきまでは、いやらしい雰囲気も下心も

感じさせない態度だった。


それが、急に上半身を寄せてきて

腕をピッタリ付けて、私の太腿を撫でてきた。

「ねぇ、この後どうする?まだ時間はたっぷりあるよ?」

「どうする?って言われても...


我ながら単純だなと思うのだけれど、

いつの間にか、ベッドに横に並んでキスをしていた。


彼の家で、床にマットを引いて

やや乱暴に抱かれたにも関わらず

異様に感じまくってしまったことに自己嫌悪を覚え

しばらくセックスしない。食事だけ。と思っていたはずなのに、

まるで、そうなるのが当たり前だったかのように

夢中でキスをしていた。