矯正をはじめてからとにかく他人の歯並びが気になるというのは前も書いたが、今も飽きずにテレビを見ながら「微妙に不自然さがあるからこいつは差し歯だな」とか「すごくきれいだから矯正経験者かも」「うひゃーひどい歯並び!なぜ直さないんだろ・・・」とひとりで芸能人の歯並び批評会を開催している。一緒にテレビを見ているつれはそれを聞いても反応はうすい、というか何の返事もない。どうでもいいのだろう。
しかしテレビではまだ消化不良で、一番じっくりと芸能人の歯を観賞できるのは雑誌とポスターである。フルスマイルでわらっている女優やモデルの歯を見て、うわー、完璧と思う。やはりきれいを仕事としている人は歯もぬかりがない。規則正しく歯列が並んでいて、しかも白い。じっくり見ると差し歯か天然の歯なのかもわかる(おそらく)。
そういったきれいな歯並びは私の理想なのだが、しかし、現在矯正治療中である私の観賞の楽しみとしては彼女たちの歯並びは実のところちょっとつまらなかったりする。あこがれの美しい歯並びをうっとりと眺めればいいはずのになぜなのか。それは、「あー、きれいだな」で終わってしまうからである。「やっぱりモデルだもんね」ぐらいのコメントしかない。
しかし、歯並びが少し乱れている女優の場合、楽しみ方が全然違う。「おしいな。ここがまっすぐだったら完璧なのに」とか「目立たないけどこの人、八重歯だったったんだ」と発見し、まるで美人の弱点を握ったようなサディスティックな楽しみができるのだ。そして、「事務所はなぜ彼女に歯を治させないのだろうか」とか、「お嬢育ちって言っているけど実は単なるイメージ作りで嘘なのかも」と勝手にあれこれと想像力をふくらませるのである。
もともとは矯正をはじめてから自分の歯並びの変化を鏡で見るのが楽しかったはずなのに、次第に芸能人の歯並びが気になりはじめ、今では世間一般の普通の人の歯並びが見たいと思っている。仕事中に上司と会話をしながらじつはその人の歯を見ているし、電車でおしゃべりをしている女子高生を見てもっと口をあけて笑ってくれないかなと思っている。
しかし、会社の人や電車の女子高生の歯をまじまじと見つめるわけにはいかないし、親しい友人にだって「歯並び見せて」なんてちょっと言いづらい。ま、つれの歯並びは何度も見せてもらっているけど・・・(彼の歯並びは一見きれいだが、左の犬歯が上下とも少しだけ曲がっている)。
しかし、意外なところで庶民の歯並びを堪能することができた。クーポンランドやホットペッパーといったフリーペーパーである。こういったフリーペーパーには、ヘアサロンの紹介がしてあり、ヘアスタイルの参考として20代の女性がモデルとして登場している。このモデルの方々の歯並びがみごとに乱れているのだ。やはりモデルといっても読者モデル。歯に投資をしていないようで、八重歯率がかなり高い。やはり世間にいるちょっときれい(かわいい)人ぐらいの歯並びってこのぐらいだよなと思う。そんな彼女たちの歯を見て、「この歯をまずは右に動かして、それから奥に引っ込んだ歯を出して」と矯正歯科医になりきって考察する。「だいたい治療期間は一年半ぐらいかな。そこまでひどくないし」と、そんなことまで予見する始末である。