こんにちは、松田聡子です。
法人の決算対策で年に何回か必ず相談されるのが、
「今期に大きな利益が見込めそうなので、生命保険で決算対策したい。でも、来期以降はたぶんトントンだから今期一時払いできるようなものがいいんだけど・・・」
というようなことです。
災害特需とか、爆発的なヒット商品が出たときとか、アベノミクスで急に売上げが伸びたりとか、中小企業にも思いがけない利益が出るものなんですね。
それ自体は悪い気はしないでしょうが、何も対策をしなければご存じのとおり、ごっそり課税されてしまいます。
そこで決算対策とくれば生命保険なんですが、実は「今期だけ」というリクエストにお答えするのは大変難しいのです。
このケースで想定しているのは損金性のある保険、つまり定期保険だと思います。
定期保険は一括払いのようなことはできません。
前納ができる商品もありますが、まとめて保険料を支払っても損金に算入できるのは1年分までです。
たまに見かけるのが、とりあえず年払いで1期分の保険料を払って翌期に解約してしまうケースです。
これだとほとんどの場合、解約して戻ってくる金額が支払保険料の半分にもならなかったりします。
これでは生命保険を活用する意味がないですよね。
理想の節税ツールは高い損金性があって、なおかつ戻ってきた時のロスも少ないものということになります。
しかもキャッシュアウトは1回だけという条件付きで。
今回は、そんな夢のような節税ツールについて考えてみます。
現状、ほとんどの中小企業が活用できるものは次の3つだと思います。
- オペレーティングリース
- 経営セーフティ共済
- 生命保険(条件付きで)
今回はオペレーティングリースについて詳しく見ていきます。
オペレーティングリースとは?
オペレーティングリースとは、リース取引の一形態で、中古市場が存在し、将来の中古市場で公正市場価格が見込まれる汎用物件に対して、貸手(リース会社)が将来の中古価値(残価)を負担することにより、借手(ユーザー)にリース期間中、有利なリース料で該当物件を使用させる仕組みのことです。
リース物件として航空機や船舶、コンテナなどがあります。
オペレーティングリースの仕組みは概ね下の図のとおりです。
- まず、匿名組合形式で投資家が出資してリース物件の一部(10~40%)のお金を集め、残りを銀行などからの借入で調達します。
- 集めたお金で、匿名組合はコンテナ等のリース物件を購入します。
- 購入したコンテナ等を海運会社等に貸し出します(リースします)。
- リース期間中はリース料とリース物件の減価償却が出資額分に応じて分配されます。
- リース期間終了後はコンテナが売却されて、分配金が入ってきます。組合は解散します。
匿名組合ではリース期間の初年度から数年は減価償却費が大きく計上されます。
この減価償却費はリース先から受取るリース料収入よりも大きいので匿名組合は損失が計上されます。
この損失が出資者側に分配されてくるのです。
匿名組合側での減価償却費は1年目より2年目、3年目とだんだんと計上額が減少していきます。
すると徐々にリース料収入が減価償却費を上回ることになりますので、数年後には出資者側で評価損を計上することはなくなります。
リース期間満了後は匿名組合はリース資産を売却します。
売却によって得られた利益は出資者へ分配されます。
出資者はこの分配金を収益として計上します。
損金性が高い
物件をリースする際に一括で資金を投入し、その際に投入した金額の約80%を1年目で減価償却として損金算入できます。さらに、2年目で残りの20%を損金算入することができます。
リース期間を法定耐用年数より長く設定し、減価償却費は法定耐用年数による定率法で計上することで投資の初期に前倒しで損金を作ることができるというものです。
一期限りの決算対策や自社株の評価を下げる場合などに有効だといえます。
キャッシュアウトは1度だけ
生命保険での節税の場合は、毎年保険料を支払う必要があります。
毎年保険料を支払うとなると、支払い続ける余裕はあるのかと不安になることも多々あるでしょう。
しかし、オペレーティングリースは一括で資金を投入できます。
そのため次年度以降の支払いを気にする必要はありません。
中途解約が困難
オペレーティングリースは、基本的に中途解約ができません。
そのため、出資額は無理のない範囲でリース期間も長すぎないものを選ぶ必要があります。
公的な保証がない
生命保険会社が破たんすると引き継いでくれる保険会社が現れない場合、契約者は生命保険保護機構の救済措置を受けることができます(100%損失をカバーできるわけではありませんが)。
一方、オペレーティングリースの場合は公的な救済が受けられないため、民間からの救済に頼ることになります。
特にリース先の倒産は出資者に損失が及ぶ可能性が高くなります。
リース先の倒産によって、リースは途中解約となり得ます。
その場合は、リース物件を中古市場で売却するか、他のリース先を探さなければなりません。
予定していたリース料やリース物件の買取もできなくなります。
商品を検討する際、リース先が大手のものを選んだほうがいいでしょう。
リース会社の倒産
リース会社が倒産した場合は、当初の約束通りの事業収支にならないケースもあります。リース先の倒産に比べると投資家に被害が及ぶことはあまりないといえます。
その場合には、他のリース会社が運営をしてくれることが多いようです。
リース物件が破損するリスク(益金が早期に発生するリスク)
しかし、保険金を出資者に分配し、リースが終了してしまうので予定より早く益金が発生してしまいます。
為替リスク(外貨建ての場合)
なるべく円建ての商品を選びたいのですが、なかなかないのが現状です。
外貨建て商品の場合は、為替リスクが伴います。
リース料は、外貨ベースでは決まっています。
再販売価格も、外貨建てです。
リース物件等の売却価格は、市場の動向や為替等によって大きく左右されます。
場合によっては売却時の損失が生じる可能性があります。
税制改正
しかし、過去にはレバレッジドリースの税制が変更になったことなどを鑑みると、税制改正の可能性も否定できません。
基本的な仕組みは同じですが、一番使い勝手がいいのはコンテナのリースだと思います。
出資額が他と比べて少なくてすむ
航空機・船舶のリースの場合、最低でも3,000万円程度になりますので、コンテナリースは手が届きやすいといえます。
リース期間が比較的短期
航空機・船舶の場合、最長10年くらいのリース期間になります。
オペレーティングリースは中途解約ができませんので、出資額も高額です。
あまり長期のリース期間は経営上のリスクになりかねません。
市場価値の振れ幅が少ない
通常、リース期間終了後は海運会社にコンテナを買い取ってもらうのですが、何らかの事情で買取ができない場合は中古市場での売却となります。
コンテナは航空機や船舶のように技術革新によって中古品の価値が急落するようなリスクが少ないです。
よって、中古市場で売却することになっても損失が発生する可能性は低いといえます。
オペレーティングリースは、1回の支払いで大きな損金効果を出せるまたとない節税ツールです。
しかし、出資する金額も大きくなりますので、リース期間やリース物件買取などの条件を押さえて自社の状況に合った商品を選ぶ必要があります。
昨今はオペレーティングリースの需要が高く商品組成が追い付かないと言われており、決算対策に利用する場合は時間的に十分な余裕を持って検討したほうがいいでしょう。
また、大きな金額が動きますので、損金で落とすことだけでなく効果的な出口戦略も併せて立てておきたいものです。
ファイナンシャルプランナー
松田 聡子

