六月の勝利の歌を忘れない〜第一章 開幕前夜〜  | 行く河の流れ

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行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 スポーツの枠を越えた世界最大のイベント、ワールドカップ。17回目にして初めてアジアの地で開催された。『World Cup 2002 KoreaJapan』。とうとうワールドカップが日本の地で開催されるのだ.・・・しかし僕らはニカラグアにいた。

 なぜこんな大事な時に日本にいないんだ?しかしそんなことはここに赴任する前から分かっていた。ならば日本にいないなりの盛り上がり方がある。週末は食堂のテーブルで夜遅くまでサッカー談義に花を咲かせた。タイムリーな情報を得る為に日本からサッカー雑誌やワールドカップの特集を組んでいる雑誌なんかを送ってもらった。ワクワクしていた。盛り上がり方の想像もつかなかった.みんなで優勝国はもちろん各グループの決勝トーナメント進出2チーム、ベスト4、得点王など事細かに予想しあった.・・・楽しかった.最高の時間だった.会話が尽きることはなく話し合いは明け方まで続いた。
一番の関心事はやはり日本代表だった.いったい誰が選ばれるのか?開催国の最低条件である決勝トーナメント進出は可能なのか?期待と不安を胸にまずは日本代表選手発表を待った. 
 『外れるのはカズ、三浦カズ・・・』
思えば4年前フランスワールドカップ、開催地フランスまで行きながら最終選考で代表を外されたカズ。『日本代表としての誇り、魂は置いてきた』成田に降りたった彼は言った.その戦う気持ち、魂を継承し持ちつづけ30歳を過ぎても進化をとめない男がいる。『中山雅史』だ。僕ら4人の気持ちは一つだった.・・・彼のいる日本代表がみたい。
 日本代表は確かに進化している.そしてこれからも進化し続けるだろう.選手もボールの扱いがうまい。今、アメリカワールドカップアジア予選を見返してみてもその差は歴然である.しかし、しかしである。僕らはなにか物足りなさを感じていた.そう、『戦う気持ち、魂』を感じないのである.選手各人は持っているであろう。しかし表に出して、それを体いっぱいプレーで表現する選手がいないのである。ドーハ世代は違った。今に比べればボールの扱いは劣るかもしれない。しかし、カズ、ラモス、中山、柱谷、井原・・・。こいつなら何とかしてくれるという強い魂を持った選手がいた。・・・中山雅史が今の代表には必要なのだ。
 日本代表最終メンバー発表は日本時間午後3時。ニカラグア時間では深夜12時である。幸いニカラグアでもインターネット環境はあるので、オンタイムでその情報を知ることができる。目覚し時計を深夜12時にセットし、ひとまず眠りにつく。・・・寝付けない。あっという間にその時間になった気がする.恐る恐るネットに繋いでみる。ホームのページをYahooにセットしているので、おそらくトピックスのところにそれに関するリンクが貼ってあるはず。飛び込んできた文字は・・・
『俊輔外れる、ゴン代表復帰』
 もう寝られない。中山雅史が代表復帰したのだ!!そう、2002年に入ってからの代表には一回も呼ばれていなかったのである。信じてはいたがほぼ絶望的な状況だった。そこからの代表復帰!
思えばこの人はいつも逆境を乗り越える。
『ドーハの悲劇』で本大会出場を逃したアメリカワールドカップアジア予選でもスーパーサブと呼ばれ控えだった。しかし当時オフト監督の目にとまりずっと出場していたアジアの大砲、高木の不調。中山は途中出場で見事角度なしの所からゴールを決め、一気にレギュラーの座を掴んだ.
 その後の彼は順風満帆かに思われた。しかし故障。それも選手生命に関わるような腰の怪我。しかし彼はおそるべき精神力で克服。Jリーグ復帰を果たす。
 フランスワールドカップアジア予選の時もそうだ。アジア予選初戦、彼はグランド内にいた。代表には選出されていない。・・・テレビ番組のベンチリポーターをやっていたのだ!しかし日本代表の相次ぐ苦戦。とうとう彼は代表に呼ばれた。救世主として。アジア第3代表決定戦対イラン戦を岡野のVゴールで制し見事日本はワールドカップ初出場を果たした.本大会ではアジア予選初戦でベンチリポートをしていた中山が本大会グループリーグ対ジャマイカ戦で日本代表この大会唯一の得点を挙げる.日本代表がワールドカップで取った初めてのゴールであった.
 そして今回。ほぼ絶望かと思われていた最終選考に見事残る。中山隊長が帰ってきた!そんな開幕前。中山の代表選出に連絡所の夜はおおいに湧いたのである。
 2006年ドイツワールドカップに出場する日本代表のメンバー23名が発表された。マリノスの久保が外れ、ジェフの巻が選ばれるという予想外の人事だった。2003年に行われた日韓共催のワールドカップの時にもドラマは起こっていた。その大会終了後に書いたモノを日記に載せてみた。