結婚式〜後編〜 | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 八坂神社のすぐ近くの会場は静かに晴れやかな佇まいの空間だった。会場の門をくぐり、綺麗な庭を歩いていると、新郎新婦が丁度、記念撮影をしていた。カメラマンから何度も「新郎さん、もっとにこやかに♪」
と言われて2,3枚の写真を撮り終えた時、新郎と一瞬目が合った。
「嫌なとこ、見られちゃったなぁ」
と笑顔で一言、言葉を交わした。

 僕は控え場所に行き、オレンジジュースを一杯飲んだ。すると、すぐに式へと案内された。会場は木造の建物で落ち着いた空間だった。僕はその中でタダタダ嬉しくってしかたがなかった。会場が静まり新郎が入ってきた。顔は真面目に視線は一直線だった。その後、新婦が父親と入ってきた。この空間をすべて彼女が決めてしまうような美しさである。

 式は進み、「誓いのキス」が宣告された。会場は一瞬の間があり、和み笑いが起きた。新郎の人柄をみんな知っているのだ。彼はキスなど想像することができない雰囲気を持っている。二人は向き合い、新郎は辿々しく新婦のヴェールを上げる。新婦も静かに笑みをたたえている。彼は顔をホッペに近づけ、新婦の頬に唇を押しつけた。そのキスがぎこちなく、会場は彼らを見守る温かい笑いに包まれた。僕にトトッと込み上げてくる感情が涙を流させた。なんて不器用で、ぎこちなくて、たどただしく、優しくて、大きくて、一生懸命な彼の人柄をそのまま表現したような素敵な瞬間なんだ。

 素晴らしい結婚式だった。心から祝福したい。