無意識の勝利 | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 四方をロープに囲まれている。リングの上。両手にはグローブをはめ、上半身は裸だ。リングシューズを履き、対角線のコーナーには今日の対戦相手である誰かがすごい形相で僕を睨みつける。僕は不思議と冷静に相手の目を見ている。
 ゴングが鳴った。相手は猛然と突進してくる。その勢いに押されて一発大きな右フックをもらった。最初の一発だった。それっきり僕の記憶も吹っ飛んだ。
 ・・・気が付くと相手が倒れていた。レフェリーのカウントが進む「・・・9,10!」と、同時にゴングが鳴り響く。セコンドから、リングサイドから人がリング上に雪崩れ込み、僕を担ぎ上げる。口々に喜びを爆発させている。チャンピオンベルトが僕に手渡される。
 「・・・チャンピオンベルト??」
 どうやら僕は世界タイトルマッチを闘って、そして勝利したようだ。キツネにつままれたような釈然としない気持ちが胸をもたげる。
 「自分がどうやってチャンピオンになったか記憶もないなんて・・・。そんな勝ち方しても意味がねぇ」
 なぜ闘っているのか?なぜボクシングなのか?そんなことよりも「勝ち方」が腑に落ちない。

 今日、教員採用試験の1次試験の合格発表が郵送されていた。なぜか合格していた。嬉しいのは嬉しいのだが、まだ2次試験もあるし気を抜くことはできない。しかし更にそんなことよりも「どうして合格したのか?」が謎だ。まぁ、結果は結果なのでありがたく頂戴して(笑)、せっかくチャンスをもらったので2次試験は合格するにしても不合格になるにしても「どうして?」がわかるようにしたい。当然良い結果を望んでいるので合格する為の準備を惜しまない。