「武士道−誠」について | 行く河の流れ

行く河の流れ

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

 以下、『武士道』(新渡戸稲造著 奈良本辰也訳)第7章をまとめる。

 真実性と誠意がなくては、「礼」は道化芝居か見世物のたぐいにおちいる。孔子が説くところによれば「誠」とは広々として深厚であり、しかも、はるかな未来にわたって限りがない性質をもっている。そして意識的に動かすことなく相手を変化させ、また意識的に働きかけることなく、みずから目的を達成する力をもっている。
 嘘をつくことやごまかしは臆病とみなされた。武士は自分たちの高い社会的身分が商人や農民よりも、より高い「誠」の水準を求められていると考えてきた。よって、武士の言葉は重みを持っているとされたので、約束はおおむね証文無しで決められ、かつ実行された。
 偽りの証言をすることに対する何らかの積極的な戒めがない中で、嘘をつくことは罪悪として咎められたのではなかった。むしろ弱さとして批判された。そして弱さはおおいに不名誉であった。