この本のことは高校2年生の時から知っていた。中学3年生の時に科学雑誌の『ニュートン』で中国シルクロードの遺跡「桜蘭」を見て以来、『遺跡』の虜になった。考古学を特集している雑誌や本を読み、世界の遺跡に思いを馳せた。とりわけ僕の気持ちを惹き付けたのがペルーにある『マチュピチュ』であった。空中都市と呼ばれ絶壁の山の頂上に浮かぶように建設された都市の遺跡である。この遺跡は侵略者であったスペイン人に発見されることはなかった。1911年になりアメリカ人の考古学者ハイラム・ビンガムによってようやく「発見」されたのである。
僕が高校生の時にこの遺跡に魅かれたのは2つ理由がある。 まず1つ目はこの遺跡が持っている『謎』に魅せられた。「なぜここに住むインカの人々はスペイン人に見つかっていないのにこの遺跡を放棄して歴史から姿を消してしまったのか?どこへ行ったのか?」考えただけでもスリリングで下手なドラマや映画を観るよりも興奮した。2つ目は『見ための美しさ』である。4,000mから6,000m級のアンデス山脈に囲まれ、絶壁の上にすばらしい建築技術で都市がある。その都市の背景には「若い峰」と呼ばれるワイナピチュが全体を引き締めている。
大学では絶対「インカ帝国」を勉強してマチュピチュへ行くんだと意気込んでいた。ある模擬試験のチラシにこのマチュピチュの写真が使われており、模試の申込書には目もくれずそのチラシの写真を切り抜き机の前に張った。しかしこの本の著者でインカ研究の第一人者「増田義郎」さんは東京大学の教授。ハードルがいきなりアンデス山脈級になってしまった。しだいにその情熱は趣味の範疇に収まっていった。
2003年7月16日マチュピチュ初登頂。翌日7月17日にはワイナピチュへの登頂。幸運にもマチュピチュへ行く機会が手の届く所へ転がってきたのである。その感動は当時の僕の年齢の25年間でも最高級である。夢が思わぬかたちで叶ってしまったのだが、僕の気持ちの中では腑に落ちない部分がある。『出来ればもっと勉強した状態で行きたかった・・・」という後悔。夢は思い続ければ転がってくる場合もある。その時の自分の気持ちの為に、夢を叶える為の準備をしていきたいと思う。どんな分野であってもその原動力となるのは情熱である。それを思い起こす為、継続させる為、高校時代に買えなかった『図説インカ帝国』を今、手にとったのである。