ISO審査員を目指す上で押さえて欲しい3つのポイント(その1) | 人財育成・ISO研修機関 経営者ブログ
を先日よりお届けしています。
審査員としての活躍を夢見る方であれば、まず基本部分としてご認識を深めておいていただきたい3つの点、
1.準備期間は想像以上に時間が必要
2.認定と認証の違いはしっかり理解しよう
3.審査業界の現状を冷静に見つめよう
についてお伝えしています。
今日は、最後の3点目についてお話します。
最後の「審査業界の現状を冷静に見つめよう」についてです。
ここは皆様それぞれに色々なことをお感じなっている部分もあろうかと思いますし、全てを網羅するのは困難ですが、あくまでこれからISO審査員になることを目指される方であれば認識しておいていただきたい、と思うことをまずは列記しておきたいと思います。
① 審査員は不足している
② 審査員のお手当は昔に比べればだいぶ安くなった
③ 審査員のお手当は審査機関によってバラバラ
④ その背景に審査機関の審査ポリシーも様々
⑤ 審査員登用時の内部教育の質、量も様々
⑥ そして審査機関のポリシーの差だけでなく、審査員の力量のばらつきのほうが問題かもしれない
⑦ 認証審査の価値をクライアントがどのように受け止めているかも千差万別
⑧ プライベート認証が起き始めると制度崩壊のリスクが
⑨ 要員認証機関(JRCA等)中抜き論
⑩ 認定審査に係る様々な問題
ざっと挙げるとこのような項目が出てきます。
前半の各項目については、今までこのブログ内でも色々お伝えしてきましたので、ある程度お読みいただいた方であればおわかりいただけているかと思います。
一方、後半についてはそれほど書いてきたわけではありませんので、それは何のこと?とお感じの方も多くおられるかと思います。
一つ一つお伝えしたいことは色々ありますが、ここではポイントに絞って記します。
もっと深く知りたいと思う方は、有料になりますが、ストアカの方で開催しているなんでも相談(個別対応です)の利用をご検討ください。
では一つずつ行きましょう。
① 審査員は不足している
かつては定年制がありましたが、定年制撤廃で、現在では80歳でも現役主任審査員という方が生まれています。
そしてセクター規格が特に審査員候補の確保が大変だったのですが、今は、主流・主力の9001や14001でも審査員の不足感が出始めています。
② 審査員のお手当は昔に比べればだいぶ安くなった
昔は本当に弁護士報酬並み、という世界がありました。
ですがそれは完全に過去の話。
審査自体の料金が安くなったことで、審査員のお手当も安くなったことは事実です。
子育て世代が外部契約審査員として生計を立てていくのは本当に大変な状況です。
③ 審査員のお手当は審査機関によってバラバラ
審査機関として組織に請求する金額が3倍程度の開きがある状況です。
組織側からいただくお金が審査機関の運営管理費用にまず充当され、そして残りの資金から審査員の手当の原資を考えるわけですから、高い料金設定をしている審査機関と安い料金設定を売りにしている審査機関では当然、審査員へのお手当の額も相当に開きが出ることになります。
④ その背景に審査機関の審査ポリシーも様々
審査機関の料金にどうしてそれほどの差が出るか。
そこが経営方針の差ということです。
日系と外資系でもちろん考え方が違いますし、日系・外資系という枠組みではなく、伝統的な審査機関と新興勢力と言われる審査機関でももちろん違いがあります。
⑤ 審査員登用時の内部教育の質、量も様々
前記の経営ポリシーの差と基本的には同じことになります。
厳しいところ、つまりしっかり教育する機関は、面接で採用した審査員候補であっても、初期研修やその後のOJT段階で残念ながら次の段階に進めなくなる人が少なからず出ます。それだけ審査の質にこだわるからこそ、ということです。
⑥ そして審査機関のポリシーの差だけでなく、審査員の力量のばらつきのほうが問題かもしれない
前記⑤のように一生懸命審査員教育をして、セレクションをかけても実は審査員の力量のばらつきはゼロにはできません。
審査機関の経営ポリシーの違いよりも、同一機関の審査員の力量のばらつきのほうが問題だ、という方もおられます。
問題意識として常に持ち続けなければならない視点です。
⑦ 認証審査の価値をクライアントがどのように受け止めているかも千差万別
中国では認証性が売買されている、という話はかなり前からまことしやかに伝えられています。
日本でもそれに近い状況が起きた、ということも聞いたことがあります。
一方で、高い審査料金を維持する審査機関は、クライアント企業の価値を高めることに一生懸命取り組むわけですから、それに向き合うエネルギーが審査を受ける側にも求められます。
企業競争力強化、という視点で考えれば、ということにはなるのですが、すべての企業がそのような経営判断ではないのが実態です。
⑧ プライベート認証が起き始めると制度崩壊のリスクが
認定機関の存在をお伝えしています。
プライベート認証でも良い、という組織が増えれば、勝手格付けと言える状況が生まれ、国際的には評価されなくなります。
さすがにそのような世界で孤立する動きをとるグローバルカンパニーは現時点においてはないでしょうが、将来がどうなるか、という視座は忘れてはなりません。
⑨ 要員認証機関(JRCA等)中抜き論
日系の認証機関でも、自組織の審査員のJRCAでの資格登録を求めないところが出てきています。
費用がかかることもあるでしょうが、要員の力量証明が認証機関の責務である、ということにISOの認証機関向け規格の中で明示されたことも要因の一つです。
どちらが良い、と一概には言えないところがこの問題の根深さを物語っています。
⑩ 認定審査に係る様々な問題
これはここではコメントを記すのを避けましょう。
本当に深くこの業界の問題を知りたい。これ以外の項目についてはそれなりに理解をできている、という状況の方には個別にお伝えしたい部分ですので、超上級者課題と思っておいてください。
さて、ここまで3つのポイント、
1. 準備期間は想像以上に時間が必要
2. 認定と認証の違いはしっかり理解しよう
3. 審査業界の現状を冷静に見つめよう
について、3回に分けてお届けしました。
ISO審査員を目指す方はこの理解のもとに、知識面のみならず技能面を磨いていただくことが、審査員として活躍するスタートダッシュにおいては大事なポイントとご理解ください。
4回に分けてお届けしてきた本テーマについてはここで終了ですが、
技能を磨きたい、という方にとって、技能を磨く入口としての簡単なトレーニングセミナーを作ろうと思っています。
審査員候補として、自分がその力量水準以上にあるのかどうか、の確認に活用いただけるように、と思って作るものです。
ご興味ある方はご連絡いただければ幸いです。特別価格の設定をさせていただきたいと思います。
(了)