前回より、ISO内部監査員を養成する上での実践教育のテーマをスタートさせました。

ですが、すっかり時間が空いてしまいました。申し訳ありません。ご容赦ください。

 

さて、前回はAI先生の回答が十分に活かせるものであった中で、研修時間(日数)についての補足を行いました。

 

教育訓練を受ける人の、スタート地点とゴール地点の明確化が何よりも大事、ということをお伝えしましたが、今日はそのAI先生の回答の補足の第2弾です。

 

 

まずは、AI先生にどのような質問をして、どのような回答を得たのか、繰り返しになりますが、記しておきましょう。

 

 

 

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Q:実践的なISOの内部監査員教育を行う上での必要な時間数、日数、標準的なカリキュラムを教えてください。

また、その際に、押さえておくべき大事なポイントは何かもあわせて教えてください。

 

A:(以下、回答を抜粋)

 

標準的なカリキュラムの例:

 

①    ISO規格の概要と要件の理解

②    内部監査の原則と目的

③    内部監査の計画と準備

④    監査手法と技法

⑤    監査記録の作成と報告

⑥    監査の後処理と継続的改善

⑦    実地での監査演習やシミュレーション

 

 

大事なポイント:

内部監査員教育を効果的に実施するためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

 

1.ISO規格の理解: 内部監査員は、対象となるISO規格の要件や目的を理解している必要があります。規格の文書の解釈や適用方法について学習しましょう。

 

2.監査手法の習得: 内部監査の手法や技法を学び、効果的な監査活動を行うためのスキルを習得しましょう。質問の仕方、証拠の収集、情報の分析などが重要なポイントです。

 

3.コミュニケーション能力: 監査員は組織内のステークホルダーとコミュニケーションを図る必要があります。クライアントとの対話や報告書の作成など、明確で効果的なコミュニケーションスキルを身につけましょう。

 

4.実地での演習: 内部監査の実地演習やシミュレーションを通じて、実践的なスキルを磨きましょう。異なるシナリオやケーススタディを活用して、実際の監査状況に近い環境での演習を行います。

 

これらのポイントを考慮しながら、実践的な内部監査員教育を計画・実施することで、組織の内部監査能力を向上させることができます。

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上記のような回答(1/3くらいは今回削除しています)になりましたが、主要なポイントは十分に含まれていますので、このままでもよいかな、と感じはしますが、そうは言ってもここだけは、というポイントを2点ほど補足解説したいと思います。

 

 

①    ISO規格の理解と会社のマニュアルの関係

 

研修において、特に外部研修機関でセミナー受講をする場合は、必ずISO規格の解説の時間が入っています。それも2日間コースであれば初日の多くの時間は規格の解説に費やすことになります。

 

規格の理解が内部監査を行っていくベースになることは間違いありませんので、規格の理解を全くすることなく、内部監査員になっていく、という教育の考え方は正直リスクを伴います。

 

しかしながら、内部監査員になっていく方々は、ISOのプロになって欲しいわけではありません。

ISOの規格理解のプロが即、ある企業の内部監査を素晴らしいレベルでできるか、という逆の方向から考えていくと、必ずしもISOのプロが素晴らしい内部監査ができるわけでないのです。

 

やはりその両者の間には違いがあり、その部分を踏まえたうえでの教育カリキュラムを組むことができるとベスト、ということになります。

 

何を申し上げたいかと言えば、初めて認証を取得する時であれば規格の理解がないことには仕組みの構築ができませんが、既に認証をとってある程度の年数が経っている企業における教育訓練、ということで考えると、より大事になってくるのは規格ではなく、その組織の基準文書、つまりマニュアル等になります。

 

品質マニュアルや環境マニュアル、と呼ばれるものが多くのISO認証取得組織には存在すると思います。

規格要求事項でマニュアルを作りなさい、というものが今はほとんどの規格でなくなりましたので、前記の名称ではなく、別な名前(業務運営マニュアル等)になっているかもしれませんが、マニュアル同等の役割を何らかの文書がまず間違いなく存在するはずです。

 

そしてそれらの文書は、ISO規格要求事項を踏まえたうえで、組織独自の追加・修正をしたうえで、活用しているはずです。

 

その文書の理解をしっかり行うことの方が、ISO規格要求事項を理解するより内部監査員として活躍していく上では重要なのです。

 

 

そのマニュアルを読みこなしていく上でISO規格の理解を深めるのは大事な過程になります。

つまりISO規格の理解が先にありきではなく、

 

組織のマニュアル等の内部文書の理解をより一層深めるためにISO規格を学ぶ、というスタンスが何よりも大事なのです。

 

ここを間違ってしまうと、ISO規格の解説の時間は、念仏を聞いているような、子守唄を聞いているようなことになってしまいかねないのです。

 

しっかりとこの違いを理解しておきましょう。

 

 

 

②    実地演習(ケーススタディ)で取り組むべきポイント

 

2つ目は、研修で学ぶべきことは、知識面と技能面に分けて考えていくことが必須であり、演習は技能面の能力獲得では必須と言ってよい要素です。

 

そして、これも外部研修での一般的なパターンとして、ほぼ間違いなく入っているのが「不適合指摘演習」です。

 

ある事例に基づいて、どうしてそれがよろしくないのか、そしてどの要求事項と比較して問題なのか、ということを指摘する演習です。

 

いわゆる、ISO監査(審査)における不適合を指摘する演習です。

 

よろしくないところをしっかり見つけ、「不適合!」と指摘する演習は、クイズを解くような感覚で取り組むと、上手く問題を見つけられた時にはやったー、という感覚になることができます。

 

それはそれで必要な要素ともいえるのですが、大事なことは、内部監査の主たる目的は、不適合を指摘することではない、という点です。

 

 

ここを勘違いされている方が、結構な数いらっしゃるように日頃の研修講師をしている中で私自身も感じています。

 

『内部監査は不適合を指摘される場だ、だから気が重たいし、ISOはどうにも好きになれない』

 

このような感覚をお持ちの方が一定数以上おられる、という感覚です。

 

 

どうしてこれが問題なのか。

 

よろしくない部分を監査で見つけたら、不適合指摘をしなければいけないのではないか、

 

という声も聞こえてきそうです。

 

はい、よろしくないところは不適合指摘をしなければダメです。

 

それはスピード違反をしている車を見つけたのに、摘発しないで見過ごしてしまうお巡りさんではダメ、ということと同じです。

 

ダメなものはダメ、ということは必須なのですが、監査を一義的な目的は、不適合指摘ではない、という点を確実に理解いただきたいのです。

 

では一義的な目的は何か。

 

 

それは、監査は「適合であることを確認する場」ということなのです。

 

 

何だ、同じことではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

 

よく文字を見ていただければ幸いです。

 

監査とは、不適合を指摘するのが目的ではなく、適合であることを認める場である、というのが上記でお伝えしたいポイントなのです。

 

 

ダメ出しをしようとすると、相手の方は構えます。

そうではなくて、きちんとされていますね、と認めることをするならば、相手の方はオープンマインドでその場にいることができます。

 

どちらが社風に好影響を与えるとお感じになりますか。

 

考えるまでもなく、後者の方が、温かいものがそこには流れるわけですから、社風にも好影響を与えます。

それがすぐさま業績に直結する、とは言い難い部分はありますが、ぎすぎすした雰囲気の会社より、皆が助け合って生きながら仕事ができる方が、多くの方にとっては歓迎されることのはずです。

 

 

そのことをしっかり念頭に置いたうえで、演習を行っていかないと、外部の専門研修機関で不適合指摘の仕方を学んできたから、自分のスタンスが正しいのだ、という勘違いの元、強気の(下手をすると傲慢な)内部監査をすることにつながるリスクがある、ということをここでは感じていただきたいのです。

 

あくまで演習では、短い時間でなおかつ、その時初めて学ぶ見ず知らずの人々と一緒に行う演習、という意味からも、複雑怪奇な設定や取り組みを図る演習はできません。

誰でもそれなりの理解ができ、できた、という感触を持ってもらう演習を行う、というのは研修機関にとってはイロハのイというべきものです。

 

その結果として、架空の事例を題材にした演習(多くの場合は、模擬監査を行う演習でしょう)を作り、提供しています。

その部分を予め理解したうえで研修に参加するのと、全く予備知識なく研修に参加するのでは、やはりゴール到達レベルに差が出てしまします。

 

自社内で研修カリキュラムを組み、かつ教材も作るのであれば話は別ですが、外部研修を活用する場合は、特に注意していください。

 

前回のAI先生の回答への補足はこの2点です。

今日は少々短いですが、ここまでとさせていただきます。

 

次回は、自社内研修を行う際に、具体的にはどのようなカリキュラムにすればよいか、という説明に進みたいと思います。

 

(了)